はじめに
「ChatGPTは触ったけど、Claudeはまだ」というEC事業者の方は多いと思います。Claude(クロード)はAnthropic社が提供する生成AIで、長文の処理・表データの読解・指示の追従精度に優れていて、EC運営の実務とすごく相性がいいツールです。
ただ、いきなり開いて使い始めると「ChatGPTと何が違うのかよく分からない」となりがちです。本記事では、EC事業者がはじめにやっておきたい初期設定を、画面イメージ付きで順番にまとめました(2026年5月時点の画面構成です)。
所要時間はおよそ30分。ここを整えるだけで、その後の作業効率が段違いに変わります。
1. アカウントを作る
まずは claude.ai にアクセスし、アカウントを作成します。Googleアカウントでログインできます。
無料プランでも触れますが、EC運営で本気で使うなら Pro プラン(月額20ドル前後) がおすすめです。理由は3つ。
- 長いCSVや商品マスタを一度に読み込める(コンテキストが大きい)
- 1日の利用制限が大幅に緩い
- 後述する Projects(プロジェクト)機能 が使える
Claude のプラン比較(2026年5月時点)
下記が現行のプラン構成です(Anthropic 公式の claude.com/pricing 参照)。EC事業者の場合は、まず個人で Pro から始めて、社内に展開する段階で Team へ移行するのが王道パターンです。
| プラン | 月額 | 主な対象 | できること(要点) |
|---|---|---|---|
| Free | 無料 | お試し | 基本チャット/Web版のみ/回数制限あり/添付ファイル少なめ |
| Pro | $20/月 | 個人・スモール業務 | Projects機能/長文・大きなファイル/優先処理/Claude Code(CLI)も使える/Webアプリ+デスクトップアプリ |
| Max | $100 or $200/月 | ヘビーユーザー | Pro機能のすべて+使用量上限を5〜20倍/Claude Code もより多く使える |
| Team | $30/seat(年契約・最低5席) | チーム導入 | チーム共有Projects/管理機能/請求一括/SSO(一部) |
| Enterprise | 要問合せ | 法人本格導入 | SSO・SCIM・データ管理機能・契約上の SLA |
EC事業者向けの コスパ最適解 はだいたい以下です。
- 個人で試す → Free(数日触る)→ Pro
- 社内勉強会で1〜2名導入 → Pro × 人数
- 5名以上で本格導入 → Team
- 大量にエージェント運用したい → Max (Claude Code をフル活用したい人向け)
※ 料金はドル建て・税抜・改定の可能性あり。最新は claude.com/pricing を確認してください。
Claude には「3つの使い方」がある
ここがChatGPTにない大きな違いです。Claudeは 同じ契約で3つのモード を使い分けられます。
| モード | 動く場所 | 主な用途 | 必要プラン |
|---|---|---|---|
| チャット | ブラウザ / デスクトップアプリ | 質問・コピー作成・レビュー分類などの単発タスク | Free〜 |
| Projects | チャットの中の機能 | "この知識を毎回使いたい"を保存(商品マスタ・トーン等) | Pro〜 |
| Claude Code (CLI) | ターミナル(あなたのPC) | ローカルファイルを直接読み書き・連続作業の自動化 | Pro〜 |
| Cowork mode(Claude Code内) | ターミナル+デスクトップ | "1コマンドで複数の作業を進めさせる" エージェント運用 | Pro〜 |
3つの違いを、業務の言葉で整理
| やりたいこと | 推奨モード | 理由 |
|---|---|---|
| 商品ページのキャッチコピーを5案出したい | チャット | 単発でいい、画面で結果を見る |
| 毎回「うちのブランドはこういう感じ」と説明するのが面倒 | Projects | 知識・指示を一度入れたら毎回参照 |
| エクセル100ファイルから一括で集計したい | Claude Code | ローカルファイルを直接触れる |
| 「先週の売上を集計して、PDFを作って、Slackに投げて」を1コマンドで | Cowork mode | 連続作業を自動で進める |
| 顧客レビュー10万件を分類してCSVで保存したい | Cowork mode | チャット画面では大量データが扱いづらい |
詳しい違いとCowork modeの安全性は、別記事「生成AIまとめ|Cowork modeとAIエージェントが業務を変える理由」で深掘りしています。
4-2. それぞれの使い方を、もう少し具体的に
A. チャット(ブラウザ/デスクトップアプリ)
一番触りやすいのがチャットです。EC事業者の8割の用途はここで完結します。
よく使うシーン - 商品ページのキャッチコピー10案 - レビュー1件を読んで返信文を考える - 競合のLP(URLを貼る or テキストを貼る)を分析 - 商品マスタCSVをアップロードして集計
コツ - ブラウザ版とデスクトップ版で機能はほぼ同じ - デスクトップ版は ファイルのドラッグ&ドロップが速い - iOS / Android アプリもある(移動中の確認に便利)
B. Projects(チャットの中の機能・Pro以上)
Projects は「毎回ゼロから説明する手間 を消す機能」です。"商品マスタCSV"と"うちの社内ルール"を Project に入れておくと、その Project 内のチャットでは Claude が常に把握した状態で答えてくれます。
よく使うProject例 - 商品マスタ管理 / 在庫予測 / レビュー分析 / キャンペーン企画
Project に入れるもの - ファイル:商品マスタCSV、ブランドガイドライン、過去レポート - Custom instructions:あなたの会社の前提・トーン・出力形式の好み
C. Claude Code(CLI・Pro以上)
ターミナルで動く Claude です。怖そうに見えますが、自然言語でやり取りするのは同じです。違いは「ローカルのファイル・フォルダを直接触れる」こと。
# インストール(一度だけ)
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
# 使う時は、対象のフォルダで起動
cd ~/Documents/EC運営
claude
起動すると対話画面に入ります。あとはチャットと同じ要領で:
あなた> 今月の売上CSVを開いて、SKU別にABC分析を出してPDFに保存して
Claude> 開きました。423SKUあります。集計してPDFを作成しますか?
あなた> はい
これだけで、ローカルファイルを読み込み・集計・PDF生成までやってくれます。
D. Cowork mode(Claude Code 内のエージェント運用モード)
Cowork mode は 「連続した作業を進めさせる」ための運用設計 のことです。Claude Code が単発のコマンドだとすれば、Cowork mode は 複数のステップを自分で判断して進める イメージです。
Cowork modeで実際にできる例 - 「先週の売上CSVを集計して、社内ダッシュボードを更新して、結果を Slack の #ec-team に投稿して」 - 「楽天とAmazonの在庫差分を毎朝チェックして、ズレがあったら通知して」 - 「新着レビュー50件を分類して、ネガには返信下書きを生成して、Notionに保存して」
Cowork modeの安全装置 - ファイル削除・送信などの重要操作は必ず人間に確認を取る - 「自動実行してよい操作」と「必ず聞く操作」を最初に決められる - 動作ログが残るので、後から何をしたか追える
使い分けの判断フロー
タスクが単発で、画面上で完結する?
Yes → チャット
No → 同じ知識を毎回使う?
Yes → Projects
No → ローカルファイルを触る?
Yes → Claude Code
No → そもそも生成AIで足りる
連続したステップを自動で回したい?
Yes → Cowork mode
「ChatGPTのPlus入ってるからいいや」と思う方も多いですが、両方契約するのが正解です。それぞれ得意分野が違うので、用途で使い分けるとアウトプットの質が上がります。
Claude が得意なこと
表データの読解/長いCSV・商品マスタの集計/指示の追従/日本語の自然さ/長文の構成ChatGPT が得意なこと
画像生成/音声入力/GPTs(カスタムボット)/プラグイン連携/コーディング補助2. 言語設定とトーン設定をしておく
Claudeは標準で日本語に対応していますが、自分の好みのトーン・言葉遣いを最初に伝えておくと、毎回指示する手間が省けます。
設定 → Profile(プロフィール)に、たとえば下記のような文を入れておきます。
- 私はEC物販事業者の経営者です
- やりとりはすべて日本語で
- 専門用語は使ってよいが、必ず日本語で意味を補足
- 「です・ます」調で
- 結論を先に書き、根拠を後から書く構成で
これだけで、毎回のやり取りが格段に自分用になります。
3. Projects(プロジェクト)を切る
Claude Pro の最大の強みは Projects(プロジェクト) です。プロジェクト単位で「共通の知識」と「指示」を持たせておけるので、毎回ゼロから説明する必要がなくなります。
EC運営者なら、最低限こんなプロジェクトを作っておくと便利です。
| プロジェクト名 | 用途 | 渡しておくもの |
|---|---|---|
| 商品マスタ管理 | 商品ページ作成、SKU整理 | 商品マスタCSV、ブランドガイドライン |
| 在庫・需要予測 | 発注計算、欠品アラート | SKU別売上履歴、リードタイム表 |
| 顧客レビュー分析 | レビュー分類、改善示唆 | レビューCSV、過去のFAQ |
| キャンペーン企画 | セール案、メルマガ草案 | 過去のキャンペーン実績、ブランドトーン |
各プロジェクトの「Custom instructions(カスタム指示)」に、その用途専用の前提を書いておくのがコツです。
Custom instructions の書き方の例(商品マスタ管理用)
あなたは私のEC物販事業の "商品マスタ運用パートナー" です。
【前提】
- 主な販路: 楽天、Amazon、自社EC
- 取り扱い: 食品ジャンル、SKU約300
- ブランドトーン: 親しみやすく、専門性も感じる、煽らない
【私からよく依頼すること】
- 商品ページのキャッチコピー作成
- 商品説明文のリライト
- レビューを踏まえた改善案
【出力形式の好み】
- まず結論を1文で
- そのあと根拠と代替案
- マークダウン表が読みやすい場合は表で
これを入れておくと、毎回「私はECの人で…」と説明しなくてよくなります。
4. ファイルとデータの渡し方を決めておく
ClaudeはCSV、Excel、PDF、画像を直接読めます。どのフォーマットでどの粒度のデータを渡すかを最初に決めておくと、運用が安定します。
おすすめのデータの渡し方
- CSV が最強:Claudeが集計・分析してくれる
- ExcelよりCSVのほうが軽くて速い
- 個人情報・センシティブな顧客データは渡す前にマスキング
- 1ファイル100MB近くまでは余裕
NG例
- 画面のスクショだけ送ってOCRさせる(精度が落ちる)
- 5つくらいのファイルを一度にまとめて投げる(混乱する)
- 1つのチャットで全然違うトピックを混ぜる(プロジェクトを分ける)
5. 「対話の型」を覚える
ChatGPTもClaudeも、結局は「指示の型」を覚えると劇的に出力が良くなります。EC運営でよく使う型を3つ紹介します。
型1: ロール設定 + 制約 + 出力形式
あなたは大手ECモールでカテゴリマネージャをしている人です。
下記の商品ページを読んで、CVRを上げる観点で改善点を5つ挙げてください。
【制約】
- 法的にNGな表現は使わない
- 競合比較は具体名を出さない
- 抽象論ではなく実装可能な改善案で
【出力形式】
| No | 改善点 | 期待効果 | 工数感 |
型2: ステップ分解
下記のレビュー100件を、以下の手順で処理してください。
1. まず感情を「ポジ/ニュートラル/ネガ」で分類
2. ネガを「商品起因/配送起因/対応起因」に再分類
3. 各カテゴリで頻出するキーワードを抽出
4. 改善優先度を5段階で付けて表で出力
型3: 自己レビュー
このメルマガ草案を書いたあと、必ず "売り込みすぎていないか" "BtoC顧客が読んで疲れないか" の2観点で自己レビューし、2回書き直してから最終版だけ出力してください。
このパターンを覚えるだけで、出力の質が体感3倍くらい変わります。
6. やってはいけないこと
最後に、EC運営でClaudeを使うときにやってはいけないことを3つだけ。
- 顧客の個人情報・氏名・住所をそのまま渡す:必ずマスキング
- 取引先の機密情報(仕入価格表など)をそのまま貼る:要約やマスキングを挟む
- 生成されたコピーをノーチェックでそのまま公開する:薬機法・景品表示法のリスク
特に食品・化粧品・健康食品ジャンルは、Claudeが法務OKかどうか判断できないので、最終チェックは必ず人間で。
7. EC事業者がよく使う「最初の10プロンプト」
Claude のプロジェクトを切ったら、以下の10個のプロンプトを試してみてください。3日でだいたいの感覚が掴めます。
| # | プロンプト |
|---|---|
| 1 | 添付の売上CSVから、ABC分析(売上構成比)を出して |
| 2 | このレビュー50件を「ポジ/ネガ」で分類して |
| 3 | 商品名「◯◯」のキャッチコピーを5案、各15文字以内で |
| 4 | この商品説明文を、楽天向けに最適化したリライトを |
| 5 | 添付の在庫CSVから、欠品リスクが高い順に並べ替えて |
| 6 | 競合A社の商品ページの強みを箇条書きで |
| 7 | この商品の写真撮影リスト(10カット)を作って |
| 8 | 春のキャンペーンメール、件名10案を |
| 9 | このセール企画、考えられる落とし穴を5つ |
| 10 | この月次レポートを、社外向けに要約して |
まとめ
EC事業者がClaudeを使い始めるときの初期設定は、ざっくり以下の流れです。
- アカウント作成 → Pro契約
- プロフィールでトーンを決める
- 用途別に Projects を切る
- データの渡し方を決める
- 対話の型を3つ覚える
- NGの線引きを意識する
- 「最初の10プロンプト」を試す
ここまでやっておけば、その後のEC運営でClaudeを使う場面で「考えるアシスタントが1人増えた」感覚で使えます。
次回は 「ChatGPTで売れ筋SKUを抽出するプロンプト集」 を公開予定です。あわせてご覧ください。
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