競合の商品ページは、誰もが「気になる」のに、誰もが「最後まで見ない」もの。

EC事業者なら一度は、競合の商品ページを開いて、しばらくスクロールして、そのままブラウザを閉じた経験があるはずです。「うちのページと違うのは分かる。けれど、何がどう違うかをちゃんと整理する時間はない」——気になるのに体系的に比較できず、結局、自社ページの改善が手付かずになる。これがEC現場のリアルです。

本記事は、その競合ページ分析をClaudeでやってみた実録です。EC運営でClaudeにできること20選の項目07「競合商品ページの分析」を、実際に手を動かして詳しく見ていきます。先にお伝えすると、整理はAIが速い。ただし、「何を改善するか」の最終判断は人がする。 この役割分担が、競合分析を「眺めて終わり」から「自社の改善TODO」に変えます。

CONTENTS / もくじ
  1. ビフォー:競合分析が進まない3つの原因
  2. やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
  3. 検証:出力を、そのまま信じない
  4. アフター:比較表が「自社改善のTODO」になる
  5. 結局、自分でやるには
  6. まとめ

ビフォー:競合分析が進まない3つの原因

なぜ競合分析が手付かずになるのか。原因は3つに整理できます。

原因 1観察ポイントがバラバラ
価格・写真・キャッチコピー・FAQ・レビュー——見るところは多く、その場の気分で目に留まったものだけ拾うことになります。比較の軸が定まっていないので、後日見返しても何を比較したのかが思い出せません。
原因 2比較表を作るのに時間がかかる
3商品を真面目に並べて比較表を作ろうとすると、半日仕事です。EC運営の通常業務をこなしながらそこに半日割くのは、現実的ではありません。
原因 3分析が「自社改善のTODO」まで降りない
仮に比較表を作れても、「うちはこれが足りない」までは出ても、「では、何から直すか」の優先順位づけが残ります。多くは、ここで力尽きます。

結果として、競合ページは見続けるが、自社ページは変わらない。気になっているのに動かない状態が、長く続きます。


やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか

ここから本記事の核心です。実際にClaudeへ渡したもの、出した指示、返ってきたものを順に見ます。なお、以下のデータは説明のための デモ用の代表例 で、実在の競合企業・商品ではありません。

渡したデータ

集めたのは、同カテゴリで上位に並ぶ3商品の商品ページ本文テキストです。本記事では「競合A・競合B・競合C」と匿名化して扱います。商品ページに掲載されている 公開情報の範囲 にとどめ、手動でコピーして1つのテキストに集めました。スクレイピングや自動収集は使っていません。これは、各モールの利用規約と、競合への礼儀の両方の観点で守るべき線です。

出した指示(プロンプト例)

最初の指示は、次のようなものです。

PROMPT 1 ── 4軸で比較する
添付の3社(A・B・C)の商品ページ本文を読み、次の4つの軸で比較し、
1つの表にまとめてください。
・訴求軸(どんなベネフィットを前面に出しているか)
・価格の見せ方(割引・特典・送料の打ち出し方)
・FAQ(どんな不安に答えているか/無い場合は「無し」)
・レビュー強調点(どんなレビューを上に出しているか)
表の下に、3社に共通する傾向と、各社の独自性も併記してください。

ポイントは、「比較する軸」を曖昧にしないことです。「比較して」だけだとAIは何を比べるかから決めようとして、出力がぶれます。軸を4つ与えるだけで、出力の安定感が大きく変わります。

返ってきた表は、こんな形でした(デモ用の代表例)。

Claudeが返してきた比較表(抜粋・デモ)
比較項目競合A競合B競合C
訴求軸時短高級感コスパ
価格の見せ方セット割定期割初回限定
FAQ配送中心使用感中心サイズ中心
レビュー強調星評価利用人数ビフォーアフター
※ 数値・表現はデモ用の代表例。実在の企業・商品ではありません。

続けて、自社改善に繋げる2つ目の指示を出しました。

PROMPT 2 ── 自社の不足を出させる
当社の商品ページ本文(添付)を、上の4軸で同じ表に並べてください。
そのうえで、「3社にあって自社に無い/弱い要素」をリスト化し、
それぞれ「改善の取り組みやすさ」「想定される効果」の2軸で
高/中/低 で評価してください。

ここまでで、「比較表」と「自社の不足要素・優先度リスト」の両方が手元に揃います。


検証:出力を、そのまま信じない

ここが必須の工程です。Claudeが整った表を返してきても、その内容をそのまま「改善方針」に直結させてはいけません。 実際に行った検証を3つ挙げます。

検証 1訴求軸の分類が自社視点に偏っていないか
プロンプトで自社情報を渡すと、AIの分類は「自社に都合のよい解釈」へ寄ることがあります。「競合Aの強みは、本当に〇〇か?」を、競合ページの原文に当たり直して照合しました。
検証 2レビュー要約の偏向確認
AIに「レビュー強調点を要約して」と頼むと、件数の多い意見に丸められ、少数だが致命的な指摘が消えることがあります。要約だけでなく、原文のレビューを数件サンプルで読み返し、要約に表れていない点が無いかを確認します。
検証 3挙げられた「強み」が事実と一致するか
AIが「競合Bは送料無料が強み」と書いても、実際のページでは条件付きの送料無料、ということもあります。固有の事実は、原文に戻って一致を確かめます。

整理はAIが速くても、事実の確認と「採用するか」の判断は人の仕事です。この線引きそのものは、生成AIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事で詳しく整理しています。


アフター:比較表が「自社改善のTODO」になる

検証を経て出来上がったのが、次のような流れです。

競合ページ → 自社改善TODO までのワークフロー INPUT 競合ページ ある競合A・B・C (同カテゴリ上位3) 公開情報・手動コピー AI処理 Claudeで整理 訴求軸/価格/FAQ/ レビュー強調点を 4軸で比較 AI出力 比較表+気づき 4軸の比較表 +「自社に足りない 要素」リスト 人の判断 改善TODOへ 事実検証 + 優先順位づけ → 改善アクション
▲ 整理はAI(ティール)、検証・判断は人(ゴールド)。色がそのまま役割を表す。

ビフォーとの違いは、終着点です。ビフォーは「気になる」で終わっていましたが、アフターは「改善TODO」まで降りています。AIが整えた比較表とリストを材料に、人が事実を確認し、優先順位を決める。そこまで来ると、競合ページを開いた時間が、初めて自社ページの改善時間に変わります。

なお、改善候補のうち「キャッチコピー」「商品説明」の文言改善は、別の生成プロセスに渡せます。具体的な進め方は商品ページのキャッチコピーをAIで量産する3つの型で扱っています。


結局、自分でやるには

同じ分析を自社でやるための、手順と注意点をまとめます。

再現の手順
① 自社カテゴリで上位に並ぶ3商品ほどの商品ページ本文を、手動コピーで集める(自動収集はしない)。② 本記事のプロンプト例を参考に「4軸で比較表に整理して」と指示する。③ 自社ページも同じ表に並べ、「足りない要素」を抽出させる。④ 検証——事実関係を原文に戻って確認し、改善候補の優先順位は自分で決める。整理はAIで一気に、判断は人がじっくり。

業態別:どの軸を重く見るか

比較する4軸はどの業態でも有効ですが、「特にどの軸を重く見るか」は業態によって変わります

型 A型番商品の小ロット型
最重要:価格の見せ方/FAQ
同じ型番が複数モールに並ぶため、価格そのものよりポイント・送料・特典の組み合わせや、購入前の不安に答えられているかが、CVRを左右します。
型 BOEM・PB型
最重要:訴求軸/レビュー強調点
同じ型番が他社に無いぶん、勝負は訴求とレビュー。なぜこの商品が必要か、どんな顧客がどう良いと言っているか——競合A・B・Cと比較しながら、自社の差別化軸を明確にします。
型 C自社EC・ブランド型
最重要:訴求軸/ページ構成・表現の質
ブランドの世界観が売上に直結する型では、文字の比較表だけでは足りません。ページ構成(写真の量、見せ方の順序)まで人の目で観察し、AIの分析と組み合わせます。

業態によって、見るべき軸の重みは変わります。万能の比較軸はありません。

競合データの扱いの注意
競合ページの分析は、商品ページに掲載されている公開情報の範囲で行い、スクレイピングや自動収集は使わないこと。各モールの利用規約に抵触する恐れがあります。手間でも、手動でコピーするのが安全な方法です。また、競合の機密情報(仕入先・原価など、公開されていない情報)を推測でAIに渡すこともしません。

まとめ

競合の商品ページは、誰もが気になりながら誰も最後まで見ない領域でした。Claudeで4軸(訴求/価格/FAQ/レビュー)に整理すれば、半日かかっていた比較表が短時間で揃い、自社改善のTODOにまで降ろせます

ただし、AIで競合に勝てるわけではありません。整理はAIが速い。事実の確認、強み・弱みの解釈、改善の優先順位——これらは人の仕事です。その役割分担を守れば、「気になるが動かない」状態から、「気になるから動く」状態へ変わります。

私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのも、競合との比較を「眺めて終わり」にせず、自社の在庫・販売・コンテンツの改善に繋げる支援です。手元の商品ページを、競合との関係のなかで磨き続ける——それが、長く続くEC事業の足腰になります。

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