「商品説明文、ぜんぶ書き直したい」——そう思ったまま、半年が経つ。

EC運営でよくある状態です。古い商品説明文が並んだまま、新SKUの追加に追われ、季節キャンペーンの文言にも追いつかない。SKUが数百以上ある事業者なら、説明文の整え直しは「やりたいができない作業」の代表格でしょう。

本記事は、その商品説明文をClaudeで整え直してみた実録です。EC運営でClaudeにできること20選の項目01「商品説明文の作成・リライト」を、実際に手を動かして詳しく見ます。これまでデータ系のやってみた記事を扱ってきましたが、本記事はテキスト系——つまり 「ブランドの声に近い領域」 の話です。下書きはAIが速い。ただし、ブランドの声を仕上げるのは人が担い、薬機法・景表法の最終チェックも、人が責任を持って通す——この線引きは、最初から最後までぶれません。

CONTENTS / もくじ
  1. ビフォー:商品説明文のリライトが進まない3つの理由
  2. やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
  3. 検証:そのまま使わない3つのチェックポイント
  4. アフター:自社らしさを保ったまま、SKU横断で更新
  5. 結局、自分でやるには
  6. まとめ

ビフォー:商品説明文のリライトが進まない3つの理由

商品説明文の更新が進まないのは、3つの構造的な理由があります。

理由 1SKU数が多すぎて、手が回らない
SKUが数百〜数千ある事業者では、1つひとつの説明文を見直す時間が物理的に取れません。1SKUに30分かけて100SKU回せば50時間。担当者の通常業務に組み込むには重すぎる量です。「やりたい気持ち」だけでは進みません。
理由 2ブランドトーンが崩れるのが怖くて、止まる
自社EC中心の事業者ほど、商品説明の言い回しは「ブランドの声」そのものです。担当者を増やしても、ブランドのトーンが崩れたら逆効果。「誰に書かせるか」のところで止まり、結局誰も手をつけられない、という状態が起きます。
理由 3薬機法・景表法のチェックがネックで、先送り
商材によっては、健康・美容・食品といった分野で、効能表現や優良誤認に関する規制の確認が要ります。法務チェックの手間を考えると、つい先送り。結果として古い表現がそのまま残り、リスクと機会損失の両方を抱えます。

3つに共通するのは、「やる気の問題ではなく構造の問題」 ということです。だからこそ、構造を変える道具で取り組む価値があります。


やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか

ここから本記事の核心です。なお、以下のデータはすべて説明のための デモ用の代表例 で、実在の商品・ブランドではありません。

渡した材料

用意したのは、4つの材料です。

① 既存の商品説明文(複数SKU) — リライトの対象。デモでは5SKU分。
② 自社のブランドガイドライン — 言い回しの方向性、トーンの指示(過去の代表的な説明文5〜10本から箇条書きで十分)。
③ NG表現リスト — 社内で禁止している言い回し(「世界一」「絶対」「必ず」「完全」「劇的」等)。
④ 商品の特徴と対象顧客のメモ — 素材・サイズ・使用シーン・想定顧客を簡潔に。

社外秘の情報や個人情報は渡していません。商品説明のリライトに必要なのは、公開予定の情報か、自社の表現基準・商品スペックだけです。

出した指示(プロンプト例)

最初の指示は、次のようなものです。

PROMPT 1 ── 4材料を踏まえて Before/After で書き直させる
添付のブランドガイドラインとNG表現リストに沿って、
5つの商品説明文(既存)を整え直してください。
・各説明文は◯文字以内
・効能を断定する表現は避け、ベネフィット中心の言い回しに
・NG表現リストにある言葉は使わない
・対象顧客(添付のメモ参照)に向けた語り口で
1商品ずつ、Before(既存)→ After(下書き案)の形で並べてください。

ポイントは、「ブランドガイドラインとNGリストを渡す」「字数と語り口を指示する」「Before/After対比で出力させる」 の3点を最初に組み込むことです。曖昧な指示だと、AIは平均的な言い回しを返します。

特定の表現を避けたい場合の2つ目の指示も用意しました。

PROMPT 2 ── 断定表現をベネフィット表現に書き換えさせる
上の5つの説明文の中で、効能や効果を断定的に表す表現があれば、
ベネフィット中心の言い回しに書き換えてください。
医薬品的な印象を与える表現は避け、
生活上の利点や使用体験で記述してください。
書き換え前後の表現を、対比表で示してください。

出てきたもの

5つの商品説明文の下書きがBefore/After対比で返ってきました。1サンプルだけ、概略を示します。

Claudeが返してきた Before/After(デモ用代表例)
BEFORE(既存)
日々の暮らしを快適にする雑貨です。多機能で使いやすく、おしゃれなデザインです。
AFTER(Claudeの下書き案)
「置き場所に迷わない、使い方に頭を悩ませない」——そんな日常の小さなストレスを減らす雑貨です。ひとつあると、朝の支度がほんの少し軽くなります。
※ 「ある雑貨A」のデモ。実在商品・ブランドではありません。

「多機能」「便利」「おしゃれ」といった抽象表現が、対象顧客の生活シーンに寄り添う具体的な記述に変わっています。ここまでが、AIの仕事です。


検証:そのまま使わない3つのチェックポイント

Claudeの下書きが返ってきても、そのまま公開してはいけません。実際に行った検証を3つ挙げます。

検証 1ブランドトーンの崩れ
AIは「自然な日本語」を返しますが、その自然さが自社のブランドのトーンと一致しているとは限りません。シックで控えめなブランドに、AIがやや饒舌な語り口を返してくることがあります。自社のサンプル文章と読み比べ、語尾・形容の度合い・人称の使い方が合っているかを、人が見ます。
検証 2薬機法・景表法に抵触し得る表現
AIに「効能をベネフィットに置き換えて」と指示しても、グレーゾーンの表現が紛れることがあります。医薬品的な印象、効果の断定、過度な比較表現、根拠不明な数字——こうした表現は、人が法務的観点でチェックリストに照らして確認します。本記事で具体表現を例示しないのは、グレーゾーンを記事に固定したくないためです。チェックは商材と各社の運用に沿って行ってください
検証 3固有の事実関係
商品のサイズ・素材・スペック・産地など、固有の事実情報は、AIが下書きの中で創作してしまうことがあります(特に「自然に書くため」に推測で補うケース)。Before原文や商品マスタと突き合わせ、事実が一致しているかを照合します。

下書きはAIが速い、ただし ブランドの声と法務、事実関係は人が握る。この線引きは、生成AIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事で詳しく整理しています。


アフター:自社らしさを保ったまま、SKU横断で更新

検証を経て、運用は次の形に落ち着きました。

商品説明文リライトのワークフロー INPUT 材料を渡す 既存説明文 ブランドガイド NGリスト・商品情報 AI処理 Claudeで下書き ガイドラインに沿った 下書きを生成 (字数・トーン指示) 人の判断 仕上げ+検証 ブランドの声で仕上げ +薬機法・景表法 +事実関係を照合 OUTPUT 公開 公開可能な 商品説明文へ (人の責任で公開)
▲ AIは下書きまで。ブランドの声と法務チェックは、人が責任を持って通す。

担当者は 「説明文を一から書く人」ではなく、「AIの下書きを、ブランドの声と法務で仕上げる人」 になります。100SKUの更新でも、1SKUあたり10分程度の仕上げ時間に圧縮できる例があります。

なお、商品ページの上部に置くキャッチコピーの量産は、別の生成プロセスに分けると効率的です。詳しくは商品ページのキャッチコピーをAIで量産する3つの型で扱っています。


結局、自分でやるには

同じことを自社でやるための、手順と注意点をまとめます。

再現の4つの準備
① ブランドガイドラインの整備:すでにあるならAIに渡せる形に短く整える。なければ、過去の代表的な説明文5〜10本から「トーンの特徴」を箇条書きにすれば十分。
② NG表現リスト:社内で禁止している言い回しをシンプルにリスト化。
③ プロンプト設計:本記事のプロンプト例を雛形に、自社の用語に置き換える。
④ 検証フロー:ブランドトーン・法務・事実関係の3点を、誰がチェックするかを決める。

業態別:どこから着手すべきか

業態によって、最初の一手は変わります。

型 ASKUが多く、定型作業が多い型
最初の一手:1カテゴリ・10〜20SKU から始める
同一カテゴリ内で言い回しを揃えると、AIの精度も上がり、ブランドの統一感も出ます。徐々にカテゴリを広げていくと安定します。
型 B自社EC中心で、ブランド表現が重要な型
最初の一手:ブランドガイドラインの整備から
AIに渡せる形に言語化する過程そのものが、自社の声を再認識する作業になります。最初の数SKUは人の関与を厚めにし、トーンが安定したらSKU範囲を広げます
型 COEM・PB長納期型
最初の一手:事実関係の照合工程を最初に設計
商品スペック(素材・サイズ・原産国など)が複雑な型では、商品マスタとAI下書きを突き合わせるテンプレを用意するのがリスクを下げます。
データ・情報の扱い
社外秘や個人情報をAIに渡さないこと。商品説明のリライトに必要なのは、公開されている情報か、自社の表現基準・商品スペックといった「内部だが社外公開予定の情報」です。それ以外は渡さない運用を明文化しておきます。そして、薬機法・景表法の最終チェックは、人が責任を持って通す——この線は外せません。

まとめ

商品説明文のリライトは、Claudeで 「下書きまで」を任せ、ブランドの声と法務、事実関係を人が握る運用 にすると、SKU横断で進められるようになります。SKU数が多すぎる、ブランドトーンが崩れるのが怖い、法的チェックがネック——この3つの構造を、AIと人の役割分担で乗り越えるイメージ です。

ただし、AIで誰でも書けるわけではありません。ブランドガイドライン、NGリスト、検証フロー——この3点の整備が前提です。整備が薄いままAIに丸投げすると、平均的な言い回しが返ってきて、結局公開できないものができあがります。

私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのも、まさにこの 「下書きはAI、仕上げは人」の役割分担を運用に乗せる設計 です。SKUが多くて止まっていた更新作業を、ブランドを保ったまま動かすこと——それが、本記事のお伝えしたい価値です。

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