Claude Code(クロードコード)は、Anthropic社が提供するターミナル上で動くAIコーディングエージェントです。「エンジニア向けのツール」と紹介されることが多いのですが、実際に毎日使っている立場から言うと、一番恩恵を受けるのはコードを書かない人です。
当社はEC事業者向けの在庫最適化SaaSを開発・運営している会社で、Claude Codeを開発だけでなく、売上CSVの集計、在庫データの分析、日次レポートの自動化といった事務作業の置き換えに使っています。この記事では、その実運用の手順をそのまま書きます。
Claude Codeとは何か
Claude Codeは、チャット画面のAIと違い、あなたのパソコンの中で実際に手を動かせるAIです。
チャット型のAI(Claude.aiやChatGPTのWeb版)は「答えを返す」ことしかできません。Claude Codeは、フォルダの中のファイルを読み、コードや文書を書き換え、コマンドを実行し、結果を確認して、失敗したら自分でやり直します。
たとえば「このフォルダにある売上CSVを月別に集計して、Excelにまとめて」と日本語で指示すると、ファイルを読み、集計スクリプトを書き、実行し、売上集計.xlsx が手元にできます。途中の作業はすべてClaude Codeが行い、人間は指示と確認だけです。
チャット型AIとの違い
| チャット型(Web版) | Claude Code | |
|---|---|---|
| ファイルの読み書き | 都度アップロード | フォルダごと直接扱う |
| 作業の実行 | できない(提案のみ) | 実行して結果を確認する |
| 失敗時 | 人間が貼り直す | 自分でエラーを読んで修正 |
| 向く仕事 | 相談・文章作成 | 繰り返し作業・データ処理・開発 |
料金
Claude Codeの利用には、Anthropicの有料プラン(Pro / Max)または API 従量課金のどちらかが必要です。
- Pro / Max プラン: 月額固定。個人〜小規模の実務ならまずこちらで十分です
- API 従量課金: 使った分だけ課金。自動実行やチーム利用で選択肢になります
最新の価格は改定されることがあるため、Anthropicの公式料金ページで確認してください。当社は固定プランで開始し、日次バッチの自動実行を組み始めた段階でAPIを併用する形に移行しました。
インストール(5分)
前提はターミナル(Macなら「ターミナル」、Windowsなら PowerShell / WSL)が開けることだけです。
# Node.js がある場合
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
# インストール確認
claude --version
初回起動時にブラウザが開き、Anthropicアカウントでログインすれば準備完了です。
# 作業したいフォルダに移動して起動
cd ~/仕事のフォルダ
claude
これだけです。以降はターミナル上で日本語で会話しながら作業を進めます。
最初の30分でやるべき設定
インストール直後にこの2つをやっておくと、その後の精度が大きく変わります。
1. CLAUDE.md を書く
作業フォルダに CLAUDE.md というファイルを置くと、Claude Codeは毎回それを読んでから作業します。「新しく入ったスタッフに渡す申し送りメモ」だと思ってください。
# このフォルダについて
- 売上データは data/ 配下。文字コードはShift-JIS
- 集計結果は output/ に日付きファイル名で保存する
- 金額は常に税抜で扱う
- 削除は行わず、不要ファイルは old/ へ移動する
当社では「数式セルを値で上書きしない」「バックアップを取ってから編集する」といった業務ルールをここに書いています。一度書けば、毎回指示しなくても守られます。
2. 許可の範囲を決める
Claude Codeは、ファイルの書き換えやコマンド実行の前に確認を求めてきます。最初はすべて確認ありのまま使い、動きが信頼できるようになった操作から許可を広げるのが安全です。特に本番システムに触るフォルダでは、確認ありのままにしておくことを勧めます。
実務での使い方:当社が毎日やっている例
ここからが本題です。「コードを書かない人の実務」でどう使えるかを、実際の手順で示します。
Excel・CSVの集計や転記に絞った手順はClaude Code で Excel 業務を自動化する、複数モールのCSVをそのまま集計する手順はClaude Code で CSV の売上集計を自動化するでより詳しく解説しています。
例1: 売上CSVの集計とレポート化
ECモール(Amazon・楽天など)からダウンロードした売上CSVは、形式がバラバラで、Excelに手作業で貼り替えている会社が多いはずです。
Claude Codeへの指示はこうです。
data フォルダのCSVを全部読んで、モール別・月別の売上を1枚のExcelにまとめて。前月比の列も付けて。
初回は数分かかりますが、2回目からは「先月と同じで」の一言で終わります。手順を CLAUDE.md に書き足しておけば、フォーマットのブレもなくなります。
例2: 在庫データから過剰SKUを抽出する
当社で実際に行っている分析です。
在庫一覧CSVと直近90日の販売CSVを突き合わせて、在庫日数が90日を超えるSKUを抽出して。金額の大きい順に並べて、上位20件の表にして。
在庫日数の計算式(在庫数 ÷ 1日あたり販売数)を一度教えれば、以降は自動です。この結果を毎週見るだけで、過剰在庫の早期発見が仕組みになります。ここから先の「発注量をいくつにするか」「600SKUを毎日自動で回す」段階になると専用の仕組みが必要になりますが、週次で20件をチェックする程度なら、Claude Codeと表計算だけで回ります。
例3: 定型レポートの自動生成
「毎朝、昨日の受注件数とエラーの有無をまとめてSlackに書く」といった定型業務は、Claude Codeに一度スクリプトを作らせて、あとはOSのスケジュール実行(cron等)に載せれば人手ゼロになります。Claude Codeの本当の価値は、AIに毎回やらせることではなく、AIに「二度とやらなくていい仕組み」を作らせられることです。
つまずきやすいポイント
実際に運用して踏んだ失敗を先にお伝えします。
- 日本語ファイル名・Shift-JIS: ECモールのCSVはShift-JISが多く、文字化けの原因になります。
CLAUDE.mdに文字コードを明記しておくと安定します - 大きすぎる指示: 「売上を分析して」では期待通りになりません。「何を・どの範囲で・どんな形式で」を1文ずつ区切ると精度が上がります
- 確認を全部OFFにする: 速くなりますが、想定外のファイル変更に気づけません。業務データを扱うフォルダでは確認を残してください
- 元データの上書き: 「元ファイルは変更せず、結果は別ファイルに出す」を最初にルール化しておくと事故がなくなります
よくある質問
Q. プログラミングができなくても使えますか? 使えます。指示は日本語で構いません。ただし「できたものが正しいか」を確認するのは人間の仕事です。最初は結果を検算できる小さな作業から始めてください。
Q. VS CodeやCursorと何が違いますか? VS Codeは編集ツール(エディタ)で、Claude Codeはその中でもターミナルでも動く「作業者」です。併用できます。エディタを持っていない非エンジニアなら、ターミナルだけで完結するClaude Codeの方が導入は簡単です。
Q. 会社のデータを渡して大丈夫ですか? Anthropicの商用プランでは、送信データが既定でモデル学習に使われない設定が提供されています。ただし顧客の個人情報や認証情報(パスワード・APIキー)は渡さない運用ルールを先に決めるべきです。当社も認証情報は環境変数で分離し、Claude Codeには触らせていません。
Q. どこまで自動化できますか? 「判断基準を言語化できる作業」までです。集計・抽出・変換・レポート生成は得意です。一方で「この在庫をいくら発注すべきか」のような、需要予測と資金繰りが絡む判断は、専用のモデルと運用が要る領域です。
まとめ:小さく始めて、仕組みに変える
Claude Codeの導入手順は、①インストール5分 → ② CLAUDE.md に業務ルールを書く → ③検算できる小さな集計作業から始める → ④うまくいった作業をスクリプト化して自動実行に載せる、の4段階です。
最初の1週間は「Excelでやっていた集計を1つだけ置き換える」ことをお勧めします。それが回り始めると、次に置き換えるべき作業が自然に見えてきます。
当社では、この記事で紹介したようなAIを実際の業務に組み込む様子を、工場・物流・EC の技術マップ上で動画にして公開しています。「自社のどの業務がAI化できるのか」を見て確かめたい方は、Arke Gallery(無料)をご覧ください。
EC の在庫・発注業務そのものを自動化したい場合は、当社が開発・運営する EC在庫最適化システム S-wallet が、この記事の「例2」を600SKU規模・毎日自動で行う仕組みです。