この記事はClaudeで自動化できること13の例の子記事です。親ページで「繰り返す作業だけ仕組み化する」と書きましたが、その仕組み化の実体がコマンドです。
Claudeで同じ作業を何度も頼んでいると、毎回同じ長い指示を書き直すことになります。「モール別に集計して、前月比を出して、欠品しているSKUを別表にして……」という指示を毎週打ち込んでいるなら、それはコマンドにまとめられます。
当社はEC事業者向けの在庫最適化SaaSを開発・運営している会社で、社内の集計・レポート作成をこの方法で運用しています。この記事は、その実際の手順です。
1. 「コマンド」と呼ばれているものは3種類ある
検索して混乱しやすいのは、Claudeまわりで「コマンド」と呼ばれるものが3つあり、それぞれ用途が違うためです。最初にここを分けておくと、自分がどれを探しているかが決まります。
| 種類 | 書き方の例 | 何をするものか | 自分で作れるか |
|---|---|---|---|
| 組み込みスラッシュコマンド | /clear /init /help |
Claude Code の動作そのものを操作する | 作れない(用意されたもの) |
| 自作スラッシュコマンド | /weekly-report |
自分がよく使う指示を保存して呼び出す | 作れる。ここが自動化の本体 |
| ターミナルから直接実行 | claude -p "…" |
対話画面を開かずに1回だけ実行する | 作れる(シェルスクリプト側) |
「自動化のコマンドを作りたい」という目的なら、探しているのは2つ目です。 3つ目は、2つ目ができたあとに「人が画面を開かなくても走る」ようにする段階で使います。
なお1つ目と2つ目はどちらも Claude Code(ターミナルで動くコマンドライン版)の機能です。ブラウザ版・アプリ版のClaudeには相当する仕組みがなく、そちらで繰り返しの指示をまとめたい場合は「プロジェクト」機能を使います。この違いはClaudeで自動化する方法で3段階に分けて説明しています。
2. まず組み込みコマンドを把握する(作る前の準備)
自作コマンドを作る前に、組み込みのものを一度見ておくと二重に作らずに済みます。Claude Code を起動して /help と打つと、その環境で使えるコマンドの一覧が出ます。
実務でよく使うのは次の4つです。
/help— 使えるコマンドの一覧。バージョンによって増減するため、記事の一覧ではなくここを正とする/clear— 会話の履歴をリセットする。前の作業の文脈が次の作業に混ざるのを防ぐ/init— そのフォルダの内容を読んでCLAUDE.md(毎回読ませたい前提条件を書くファイル)の下書きを作る/compact— 長くなった会話を要約して圧縮する
作業を切り替えるときに /clear を挟まないと、前の依頼の条件を引きずった答えが返ってくることがあります。コマンドを作り込む前に、まずこれだけは習慣にしてください。
CLAUDE.md 側に何を書くかはCLAUDE.md の書き方にまとめています。コマンドと CLAUDE.md の役割分担は次のとおりです。
CLAUDE.md= 毎回の前提になること(対象フォルダの構成、使っている用語、出力の決まりごと)- コマンド = 特定の作業をするときだけ必要な手順
この分担を間違えて、作業固有の手順を CLAUDE.md に全部書くと、関係ない作業のときにも読み込まれて指示がぼやけます。
こうした自動化を実際に動かしている画面を、工場・物流・ECの技術マップ上で1分の動画にして公開しています。文章より先に動くところを見たい場合は、Arke Gallery(無料会員登録)からどうぞ。
3. 自作コマンドの作り方(3ステップ)
自作のスラッシュコマンドは、Markdownファイルを1枚置くだけで作れます。プログラミングは不要です。
ステップ1: 置き場所を決める
| 置き場所 | 効く範囲 | 向くもの |
|---|---|---|
プロジェクト内の .claude/commands/ |
そのフォルダで作業するとき | 業務ごとの手順。チームで共有したいもの |
ホームの ~/.claude/commands/ |
どのフォルダでも | 自分だけが使う汎用の手順 |
業務の集計手順は前者、文章の推敲など汎用のものは後者、という分け方で運用しています。
ステップ2: ファイル名をコマンド名にする
.claude/commands/weekly-report.md というファイルを作ると、そのまま /weekly-report で呼び出せます。ファイル名がコマンド名になるので、あとから自分が思い出せる名前にしてください。
ステップ3: 中身に「いつも書いていた指示」をそのまま書く
ファイルの中身は、普段Claudeに打ち込んでいる指示をそのまま貼るところから始めて構いません。うまく動く形が固まってから整えます。
例(.claude/commands/weekly-report.md):
data/sales/ 配下の当月CSVを読み、次の順で週次レポートをMarkdownで出力してください。
1. モール別(Amazon / 楽天 / 自社EC)の売上合計と前週比
2. 販売数が前週比で半分以下になったSKUの一覧(SKU・商品名・前週販売数・今週販売数)
3. 在庫数が直近4週の平均販売数を下回っているSKUの一覧
条件:
- 金額は円・整数で出す。単位を毎回書く
- 集計に使った行数と、除外した行数・除外理由を最後に書く
- 判断や推測を本文に混ぜない。数字と、数字から直接言えることだけを書く
最後の2行が実務では効きます。 集計に使った行数を出させておくと、途中でデータの読み落としがあったときに気づけます。「判断を混ぜない」と書いておかないと、頼んでいない考察が付いてきて、どこまでが実データか読み手が判別できなくなります。
毎回変わる部分を渡したい場合
コマンドの中で $ARGUMENTS と書いておくと、呼び出すときに付けた文字がそこに入ります。
$ARGUMENTS の期間で、上記のレポートを作成してください。
これで /weekly-report 2026年9月第2週 のように呼べます。期間や対象だけが毎回変わる作業は、この形にすると1つのコマンドで回せます。
4. 実務での使用例: 週次の在庫レポートを1語にまとめた
当社で実際に運用している例です。
コマンド化する前は、毎週月曜に次の作業をしていました。
- Amazon・楽天・自社ECの3つの管理画面から、前週分の販売CSVをダウンロードする
- 表計算ソフトで3つを1つのシートに結合する
- SKUコードの表記ゆれ(全角ハイフン・半角ハイフン・末尾スペース)を直す
- 前週比を計算し、落ち込んだSKUを目で拾う
- 在庫数と突き合わせて、発注候補をリストにする
2〜5の指示をClaudeに毎週打ち直していて、指示文を書くだけで10分以上かかっていました。しかも毎回微妙に文面が違うため、出てくるレポートの形も週ごとにずれていました。
コマンド化した後は、CSVを所定のフォルダに置いて /weekly-report と打つだけになりました。作業時間は3つのCSVをダウンロードする時間と、出力を確認する時間で、合わせて15分程度です。
うまくいかなかった点も書いておきます。 最初の2週間は、SKUの表記ゆれの直し方が毎回違っていて、同じSKUが2行に分かれて出ることがありました。原因は、コマンド側に「表記ゆれを直して」としか書いていなかったことです。「半角ハイフンに統一し、前後の空白を削除し、英字は大文字に揃える」と具体的に書き直してから再発していません。
Claudeに任せていないことも明確にしています。発注数の最終決定と、発注書の送信は人が行います。コマンドが作るのは「発注候補の一覧」までです。金額が動く判断を自動化の範囲に入れていません。
在庫データの突き合わせや分析そのものの進め方は、Claudeで在庫管理をする手順に分けて書いています。
5. 人が画面を開かずに走らせる(ターミナルから直接実行)
コマンドが安定して動くようになったら、対話画面を開かずに実行する形に移せます。ターミナルから次の形で呼び出します。
claude -p "data/sales/ 配下の当月CSVから週次レポートを作成してください"
-p は対話画面を開かず、指示を1回実行して結果を標準出力に返すモードです。シェルスクリプトに書いておけば、定期実行の仕組み(cron 等)から呼べます。
ただし、いきなり定期実行にしないでください。 手動で数回動かし、出力が毎回同じ形で出ることを確認してからにしてください。定期実行にすると、失敗しても誰も気づかないまま結果だけが積み上がります。定期実行に移す前に決めておくことは自動実行・定期実行の手順にまとめています。
6. 比較表: どの形で自動化するか
| 都度の会話 | プロジェクト機能 | 自作コマンド | ターミナルから直接実行 | |
|---|---|---|---|---|
| 必要な環境 | ブラウザ/アプリ | ブラウザ/アプリ | Claude Code | Claude Code |
| 準備の手間 | なし | 小 | 中(ファイル1枚) | 中〜大 |
| 指示の打ち直し | 毎回必要 | 一部不要 | 不要 | 不要 |
| 人が画面を開く必要 | ある | ある | ある | ない |
| 出力のばらつき | 大きい | 中 | 小さい | 小さい |
| 向く頻度 | 月1回未満 | 月1〜3回 | 週1回以上 | 毎日 |
週1回以上発生する作業から自作コマンドにするのが、手間と効果の釣り合う線です。 月1回の作業をコマンド化しても、次に使うころには中身を忘れています。
7. 失敗パターン5つ
- いきなり全工程を1つのコマンドに詰め込む — 途中で止まったときに、どこが悪いか切り分けられません。まず2〜3工程で作り、動いてから足してください
- 検算用の数字を出させていない — 処理した行数・除外した行数を出力に含めないと、静かにデータが欠けても気づけません
- コマンドの中身を更新しない — 業務の手順が変わったのにコマンドが古いままだと、間違った形のレポートが毎週出続けます。手順を変えた日にコマンドも直してください
CLAUDE.mdとコマンドに同じことを二重に書く — 片方だけ直して食い違い、指示が競合します- 確認工程を省く — 金額・顧客対応が絡む出力は、人が目を通す工程を残してください。コマンドが作るのは下書きまでです
8. よくある質問
Q. プログラミングの知識は必要ですか? 自作スラッシュコマンドを作るところまでは不要です。日本語で手順を書いたMarkdownファイルを1枚置くだけです。ターミナルから直接実行する段階では、シェルスクリプトの基本的な書き方が分かると扱いやすくなります。
Q. ブラウザ版のClaudeでコマンドは作れますか? スラッシュコマンドはClaude Code(コマンドライン版)の機能です。ブラウザ版・アプリ版で繰り返しの指示をまとめたい場合は「プロジェクト」機能を使い、プロジェクトの指示欄に手順を書いておく形になります。
Q. 使えるコマンドの一覧はどこで確認できますか?
Claude Code 上で /help と打つと、その環境で使えるコマンドが出ます。組み込みコマンドはバージョンによって変わるため、記事の一覧ではなくこちらを確認してください。
Q. コマンドはチームで共有できますか?
プロジェクト内の .claude/commands/ に置いたファイルは、そのフォルダをバージョン管理(Git等)に含めていれば、他のメンバーの環境でも同じコマンドとして使えます。
Q. 実行結果が毎回少しずつ違うのですが 出力の形を指定していないことが原因のことが多いです。「Markdownの表で」「列は SKU・商品名・前週販売数・今週販売数 の順で」のように、形式まで書き切ると揃います。
9. まとめ
Claudeの自動化コマンドは、毎回書いていた指示をファイルに保存して短い1語で呼び出す、それだけの仕組みです。特別な準備は要りません。
順番としては、まず週1回以上やっている作業を1つ選び、いつも打ち込んでいる指示をそのままファイルにする。数回動かして安定したら、検算用の数字と出力形式の指定を足す。そこまでできてから、人が画面を開かない形(定期実行)を考えれば十分です。
集計・突き合わせを都度コマンドで回すのではなく、Amazon・楽天・自社ECの在庫最適化を毎日自動で行う仕組みが必要になった場合は、当社が開発・運営するEC在庫最適化システム S-walletがあります。14日間無料トライアルからお試しいただけます。
在庫金額がどれだけ圧縮できるかの目安だけ先に知りたい場合は、30秒で在庫圧縮メリットを試算できます(簡易試算であり、結果を保証するものではありません)。
また、こうしたAI活用の実例を工場・物流・ECの技術マップ上で動画にして公開しています。Arke Gallery(無料)からご覧いただけます。