月末、Seller Central で「FBA在庫保管料」のレポートを開く。先月より少し増えている。半年に一度の長期保管手数料の請求も来ていた——

明細を1行ずつ追っていくと、「これ、減らせる余地あるな」と感じつつも、どこから手をつければいいか分からない。年商1〜10億で Amazon FBA を主軸にしているEC事業者が、定期的に味わう違和感です。

本記事では、FBA保管料を見直すべき水準と、3つの具体的な見直しポイントを整理します。

CONTENTS / もくじ
  1. 「月10万円・売上比3%」が転換点である理由(業態次第の注意点も)
  2. ポイント1:在庫日数 × 容積の交差点を見つける
  3. ポイント2:FBA「だけ」に置かない(多拠点配置への移行判断)
  4. ポイント3:長期保管手数料(181日/331日)の月次モニタリング
  5. 図解:FBA関連手数料の構造を分解する
  6. 明日からできる「FBA保管料3チェック」(しきい値付き)
  7. 持ち帰れるツールと、次に読みたい記事

「月10万円・売上比3%」が転換点である理由

FBA保管料は、月1〜2万円のうちは「事業の必要経費」として違和感なく流れていきます。けれど、ある水準を超えると、それは単なる経費ではなく、利益を構造的に削る存在に変わります。その転換点の目安が、「売上比3%超」または「月10万円超」です。

年商3億のEC事業者で、FBA保管料が 売上比3% なら年 1,080万円
営業利益率 10% の企業なら、保管料だけで 利益の3分の1 を持っていく計算

ここで強調しておきたいのは、2つの基準のうち主軸は「売上比3%」で、絶対額の「月10万円」は補助的な目安だという点です。SKUサイズ・回転日数・販売単価によって健全な保管料水準が大きく変わるからです。

同じ月15万円でも、月商1,500万円なら1%(健全)、月商400万円なら3.7%(危険)と意味がまったく違います。

3パターンで見る「自分はどこにいるか」

健全
月商 2,500万でFBA保管料 月15万円
売上比 0.6%
要観察
月商 1,500万でFBA保管料 月25万円
売上比 1.7%
危険
月商 2,000万でFBA保管料 月70万円
売上比 3.5%

保管料の 絶対額 より、「売上のうち何%が保管料に化けているか」 を見るのがポイントです。

業態によっても基準は動く

業態別 健全レンジの目安
小型品中心(サプリ/コスメ/小物アクセサリー):売上比 1%超 で見直しサイン
中型品中心(食品/日用品/アパレル):売上比 3%超 が転換点(標準ケース)
大型品中心(家具/大型家電/スポーツ用品):容積上やむを得ず、売上比 4〜5%でも構造的に許容範囲

「業態次第」を前提に、まず自社の妥当ラインを置くことが第一歩です。

ポイント1:在庫日数 × 容積の交差点を見つける

最初の見直しポイントは、SKU別の「在庫日数 × 容積」で、保管料を食っているSKUを特定することです。

FBA保管料は 容積建て(cm³ベース)で計算されます。同じ評価額1,000万円の在庫でも、小型品ばかりなら月3万円、大型品が混ざると月20万円——容積で大きく差が出ます。

さらに、在庫日数が長いほど保管期間が伸び、料金も比例して積み上がる。つまり、「容積大 × 在庫日数長」のSKUが、保管料を食う典型です。

SKU別に「在庫日数」「容積」「在庫評価額」の3軸でテーブルを作り、容積×在庫日数で並べ替え
→ 多くの場合、上位10SKUで保管料全体の40〜60%を占める
→ 年商3億・SKU150のEC事業者なら、10SKUを動かせば保管料の半分が動く

抽出できたSKUは、3択で判断します:

特に、在庫日数90日超かつ容積大のSKUは、まずこの3択のテーブルに乗せるべきです。


ポイント2:FBA「だけ」に置かない(多拠点配置への移行判断)

第2の見直しポイントは、配置の話です。「Amazonで売るならFBA」は、ある時期までは正解でした。しかし、ここ数年のFBA手数料改定により、SKUによっては自社倉庫や3PL倉庫に置いた方が安いケースが明確に増えています。

判断のしきい値はシンプルです:

FBA保管料を坪単価換算した時、3PL坪単価を上回るSKU は移管候補
一般的な 3PL 坪単価:月 5,000〜8,000円
FBA容積建てを坪単価に換算(回転の遅いSKU):月 10,000〜15,000円 相当
→ 移管するだけで、SKU単位の保管コストは 1/3 程度まで下がる

特に次の3条件が重なるものは、3PL・自社倉庫への移管候補です:

  1. Amazon以外でも売れるSKU
  2. 在庫回転が60日超のSKU
  3. 容積が大きいSKU

Amazonでの販売は、FBAではなく マケプレ自社発送(または出荷代行)に切り替えるという選択肢を取れます。

また、Amazon系の選択肢として、軽量小型品向けの「小型・軽量プログラム」 や、低回転品向けの倉庫サービスなど、SKU特性に応じた使い分けも検討に値します。

「全部FBA」が最適だった時代は、もう終わっている
かつてはFBA一択でしたが、手数料改定の積み重ねで、SKU特性に応じた使い分けこそが利益最大化の鍵になっています。

ポイント3:長期保管手数料(181日/331日)の月次モニタリング

第3の見直しポイントは、長期保管手数料です。FBAでは、保管期間 181〜330日 のSKUに段階的な追加料金、331日超 のSKUにさらに高い料金が課されます。

請求は 半年ごと にまとめて来るため、「半年に1回、思わぬ請求が来て驚く」というのが、見直しを遠ざけている根本原因です。

181日超のSKUが在庫評価額の 20%超
長期保管手数料が 毎期効く構造に入ったサイン

実務上は、月初に「在庫日数170日超のSKU」をピックアップする運用が現実的です。181日のラインを越える前——つまり「あと10日で長期扱いになる」段階で、撤退/値引き/セット販売の3択判断を回せれば、長期保管手数料そのものを構造的に減らせます。

「半年ごとの請求書を見て驚く」から「月次で先回りして手を打つ」へ。運用の主導権を取り戻すのが、ここでの本質的な変化です。


図解:FBA関連手数料の構造を分解する

FBA関連手数料は、内訳として大きく次の4要素に分かれます。可視化すると、自社のどこに重みがあるかが見えてきます。

FBA関連手数料の構造比較(月次) 通常保管料 入出庫費 長期保管手数料 在庫超過保管料 健全 12万 売上比0.8% 8 3 危険 70万 売上比3.5% 通常保管 32 入出庫 8 長期保管 25 超過5 ← 売上連動部分 過去の発注判断が固定費化 → 0 10 20 30 40 50 60 70(万円)
▲ 同じ「FBA保管料」でも、内訳の重心が違えば打ち手はまったく変わります。

注目していただきたいのは、「売上に連動して動く部分」(通常保管料・入出庫費) と、「売上に連動せず、過去の発注判断のツケが固定費化している部分」(長期保管手数料・在庫超過保管料) の境界です。

危険パターン(月70万)の例:
長期保管 + 在庫超過 = 月30万円(売上比1.5%)
年換算:360万円 ← 営業利益率10%の企業なら、毎年これだけの利益が
「過去の判断のツケ」として消えている計算

逆に言えば、ここを減らせばダイレクトに利益が戻ります


明日からできる「FBA保管料3チェック」

3つの観点を、明日からのアクションに落とし込みます。すべて Seller Central のレポートと Excel だけ でできます。

CHECK 1所要15分直近12ヶ月のFBA保管料推移を1グラフに
Seller Central → ペイメント → レポートライブラリ
→ 月別のFBA保管料合計 と 月商 を Excel で1グラフに重ねる
→ 売上比 (%) を計算してプロット
〜1% 健全 1〜3% 要観察 3%超 危険
トレンドが右肩上がりなら、どの月から構造が変わったかも併せて確認します。新商品ローンチ/大型販促/コロナ等の特需明け、いずれかの月から線が折れていることが多いです。
CHECK 2所要30分181日超SKUの金額と容積を1枚に
FBA在庫年齢レポート(Inventory Age Report)から181日超SKUを抽出
→ SKU・在庫評価額・容積・直近30日販売数 を並べる
〜10% 健全 10〜20% 要観察 20%超 危険
181日超SKUが在庫評価額の 20%超 なら、長期保管手数料の構造化が始まっているサイン。月初に170日超SKUを早期警戒する運用に切り替えるのがおすすめです。
CHECK 3所要60分FBA手数料 vs 3PL坪単価のSKU別比較
容積大・低回転の上位10SKUを抽出
→ FBA保管料を坪単価換算(容積 × 月数 × レート ÷ 1坪収容容積)
→ 3PL坪単価(5,000〜8,000円/月)と比較
FBA換算 ≦ 3PL 3PLの1〜1.3倍 3PLの1.3倍超
FBA換算坪単価が3PL坪単価の 1.3倍超 のSKUは、3PLへの移管検討に値する候補。10SKUの移管で、年間 100〜200万円 の保管費が動くことも珍しくありません。

この3チェックは、いずれも月初の 30分〜2時間 の運用で済みます。にもかかわらず、年間で 数百万円単位 の保管料が動く可能性のある作業です。


持ち帰れるツールと、次に読みたい記事

FBA保管料モニタリング用の Excel テンプレ(CHECK 1〜3対応)は、無料配布しています。本記事と合わせてお使いください。

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無料で在庫最適化する方法|エクセル1枚から始める実践ステップ

SKU別在庫日数、回転率、発注計算式、週次レビュー、保管料モニタリングまで、コピペで使える形で公開。Excelテンプレも無料配布。

記事を読む(無料テンプレDLあり) →
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月次キャッシュフローを安定させる、在庫戦略の3つの観点

FBA保管料の話の前提。在庫投下/入金サイト/支払サイトの3観点でCCCを設計する話。本記事と一緒に読むと、保管料が利益・CFのどこに効くかが立体で見えます。

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売上が伸びても利益が残らないEC事業者の決算書に、共通する3つの構造

FBA保管料が伸びてしまう根本構造を、決算書レベルで分解した記事。在庫膨張/保管コスト膨張/広告手数料上昇の3点セットでどうぞ。

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本日2本目の記事では、「在庫の滞留比率を1分で把握するフレーム」 をご紹介します。FBA保管料の問題の根本にある「滞留在庫」を、SKU単位ではなく事業全体として1分で把握する見方です。


まとめ

FBA保管料は、「売上比3%超」または「月10万円超」が転換点。ただし業態によって基準は動くため、自社の妥当ラインを置くことが第一歩です。

見直しの3ポイントは:

  1. 在庫日数 × 容積 で食っているSKUを特定する
  2. FBA以外の選択肢(3PL/自社倉庫/小型軽量プログラム等)と使い分ける
  3. 長期保管手数料 を月次でモニタリングする

3つに共通するのは、「SKU単位の細かいデータを横断的に見続ける」という運用です。10SKUなら手作業でも回りますが、100SKU・1,000SKUとなると、人手では現実的に追いきれません。

私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのは、まさにこの「全SKU × 全モール × 全倉庫」を横断したシミュレーションの自動化です。Amazon・3PL・自社倉庫の最適配置を、AIエージェントが先回りで提案する。それが、FBA保管料の 構造化負担を、設計対象に変える方法 だと考えています。

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「自社のFBA保管料は売上比何%か」「どのSKUが食っているのか」を診断したい方へ。Arke では、Seller Central のレポートデータを基に、FBA保管料の構造と削減余地を 60分で診断する無料サービスをご提供しています。診断結果は、その場でレポート形式でお持ち帰りいただけます。

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