Excelやスプレッドシートを開けば、SKUと数字がずらりと並んでいる。在庫の数は分かる。けれど、その表を見て 「このSKUは今すぐ発注すべきか、まだ待っていいか」が即答できるか というと、多くの場合できません。表は「ある」のに、判断には「使えない」のです。
本記事は、その在庫管理表をClaudeで「発注判断できる形」に整理してみた実録です。EC運営でClaudeにできること20選の項目05「在庫データの整理」を、実際に手を動かして詳しく見ていく回にあたります。先に結論を言えば、整理はAIが速い。ただし、判断は人がする。 その分担さえ守れば、手元の表は見違えます。
- ビフォー:よくある在庫管理表の「使えなさ」
- やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
- 検証:出力を、そのまま使わない
- アフター:発注判断に効くようになった表
- 結局、自分でやるには
- まとめ
ビフォー:よくある在庫管理表の「使えなさ」
整理の前に、「使えない在庫管理表」が具体的にどういう状態かを挙げます。心当たりがあるはずです。
数字は並んでいる。でも、判断に必要な数字が並んでいない——これがビフォーの状態です。
やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
ここからが本記事の核心です。実際にClaudeへ渡したもの、出した指示、返ってきたものを順に見ます。なお、以下のデータ内容はすべて、説明のためのデモ用の代表例です。
渡したデータ
用意したのは、2つのシンプルなデータです。1つは 在庫データ——「SKU・商品名・現在の在庫数」の列を持つCSV。もう1つは 販売実績データ——「SKU・販売日・販売数」の列を持つCSV。どちらも各モールの管理画面から正規の方法でエクスポートできる、ごく標準的なものです。特別なデータは要りません。 完璧に整える前に、まず手元にあるもので始めて構いません。
出した指示(プロンプト例)
最初に渡した指示は、次のようなものです。
添付の2つのCSV(在庫データ・販売実績データ)をSKUで突き合わせ、 SKUごとに次の列を持つ1つの表にまとめてください。 ・SKU / 商品名 / 現在の在庫数 ・直近30日の平均日販(販売実績から計算) ・在庫日数(在庫数 ÷ 平均日販) ・最終販売日からの経過日数 計算の前提(使った期間など)も表の下に併記してください。
ポイントは、「在庫日数をどう計算してほしいか」を曖昧にしないことです。平均日販を直近30日で取るか90日で取るかで、在庫日数は変わります。期間を指示に明記し、「前提も併記して」と頼んでおく。これで、後の検証がしやすくなります。
続けて、判定列を足す2つ目の指示を出しました。
上の表に「判定」列を追加してください。 ・在庫日数が短く、欠品の懸念があるもの → 「要発注」 ・在庫日数が長く、最終販売も止まっているもの → 「滞留」 ・それ以外 → 「適正」 判定に使った境界値も、表の下に明記してください。
「分析して終わり」ではなく、「その日の発注作業ですぐ動ける形」に並べる——ここがEC現場で本当に効くポイントです。
検証:出力を、そのまま使わない
ここが最も大事な工程です。Claudeが整った表を返してきても、それをそのまま発注判断に使ってはいけません。 実際に行った検証を3つ挙げます。
整理はAIが速い。しかし、計算前提と判定基準が自社に合うかは、人が確かめる。この線引きについては、生成AIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事もあわせてお読みください。
アフター:発注判断に効くようになった表
検証を経て出来上がったのが、次のような1枚の表です。
ビフォーとの違いは、列の数ではありません。「その列を見れば、次の行動が決まる」列が揃ったことです。在庫日数を見れば発注の緊急度が分かる。最終販売日からの経過を見れば、その在庫が生きているか止まっているかが分かる。判定列を見れば、「要発注」のSKUだけを抜き出して、その日の発注作業に取りかかれます。
整理後にいちばん変わるのは、会議です。「なんとなく多い気がする」「いや、欠品が怖い」という議論が、「在庫日数240日・最終販売58日前・評価額◯万円」という具体的な数字での議論に変わります。在庫日数や滞留の考え方は、3ヶ月以上滞留比率を1分で出す現状把握フレームでも扱っています。
結局、自分でやるには
同じことを自社でやるための、手順と注意点をまとめます。
業態別:まず何を一覧化すべきか
どの列から揃えると効果が出やすいかは、業態によって変わります。
まとめ
在庫管理表が「発注判断に使えない」のは、表が無いからではなく、判断に必要な列が無いからです。在庫日数、最終販売日からの経過、判定——これらをClaudeで整理して足すだけで、表は「数字の置き場」から「次の行動が読める道具」へ変わります。
ただし、AIで在庫管理がすべて終わるわけではありません。整理はAIが速く、計算前提や判定基準が自社に合うかの検証、そして最終的な発注の決定は、人の仕事です。その役割分担が、この整理を「使える」ものにします。
私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのも、この「判断できる形に整える」工程です。手元の在庫表を、毎週の発注判断に使える1枚へ。在庫最適化の取り組みは、そこから始まります。
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