EC事業者の多くが、売れ筋・死に筋の仕分けを 「肌感覚」 で行っています。「あの商品はよく動いている」「あれは最近見ない」——。経験豊富な担当者ほど、感覚は当てになります。けれど、SKUが数百を超えると、人の感覚は確実に取りこぼします。そして取りこぼしは、過剰在庫と機会損失の両方を生みます。
本記事は、その仕分けをClaudeでやってみた実録です。EC運営でClaudeにできること20選の項目06「売れ筋・死に筋のSKU仕分け」を、実際に手を動かして詳しく見ます。前回のClaudeで在庫管理表を「発注判断できる形」に整理してみたが「表を整える」編だったのに対し、本記事は「整った表で仕分ける」編です。仕分けはAIが速い。ただし「では、どう動かすか」は人が決める。その線引きは変えずに進めます。
- ビフォー:感覚での仕分けがズレる3つの理由
- やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
- 検証:出力をそのまま信じない
- アフター:仕分けが「次の打ち手」に繋がる
- 結局、自分でやるには
- まとめ
ビフォー:感覚での仕分けがズレる3つの理由
感覚での仕分けが過剰在庫や機会損失を生むのは、3つの構造があるからです。
感覚での仕分けがズレる根本は、「単一の物差しで全SKUを見てしまう」 ことです。物差しを増やすほど見え方は正確になりますが、人の頭で複数物差しを同時に動かすのは難しい。ここがAIの出番 です。
やってみた:Claudeに何を渡し、どう指示したか
ここから本記事の核心です。なお、以下のデータは説明のための デモ用の代表例 で、実在企業のデータではありません。
渡したデータ
用意したのは、1つのCSVです。列は 「SKU・商品名・直近90日の販売数・売上・粗利(または原価)・最終販売日・現在の在庫数」。各モールの管理画面と自社の販売管理データから、正規の方法で揃えられます。粗利の代わりに原価を渡し、AIに粗利率を計算させる形でも構いません。個人情報や社外秘の列は、事前に削除してから渡します。
データの形は、こんなイメージです。
| SKU | 商品名 | 販売数 | 売上 | 粗利 | 在庫数 | 最終販売日 | 販売開始日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A001 | 定番サプリA | 980 | 2,940,000 | 1,176,000 | 420 | 2026-05-29 | 2024-08-01 |
| A002 | 季節ギフトB | 150 | 900,000 | 90,000 | 600 | 2026-05-10 | 2025-11-01 |
| A003 | 新商品コスメC | 120 | 600,000 | 300,000 | 220 | 2026-05-28 | 2026-04-20 |
| A004 | 雑貨D | 40 | 160,000 | 32,000 | 500 | 2026-04-01 | 2023-09-01 |
出した指示(プロンプト例)
最初の指示は、次のようなものです。
添付のSKUデータを、直近90日の「売上」と「粗利率」の2軸で 4象限に分類してください。 ・象限A:売上高 × 粗利率高 → 売れ筋 ・象限B:売上低 × 粗利率高 → 隠れ売れ筋 ・象限C:売上高 × 粗利率低 → 隠れ死に筋 ・象限D:売上低 × 粗利率低 → 死に筋候補 売上と粗利率の境界値は、データの中央値(メジアン)を使ってください。 各SKUがどの象限に入ったかを、表で出力してください。
ポイントは、境界値の決め方をAIに任せきらない ことです。「中央値で」と明示するか、「売上TOP30%」など具体的な基準を渡します。曖昧にすると、境界値が毎回ぶれて再現性が下がります。
続けて、トレンドを見る2つ目の指示を出しました。
上の表に「直近30日と過去90日の比較」を加え、 トレンドが変化したSKUを抽出してください。 ・「過去90日では死に筋だが、直近30日では伸びている」SKU ・「過去90日では売れ筋だが、直近30日では失速している」SKU 判断には、直近30日の売上を3倍した推定値と、過去90日売上を比較してください。
ECでは、数字の絶対値より変化の方向が経営判断に効くことが多い。トレンド軸を加えるだけで、ABC分析の解像度がぐっと上がります。
検証:出力をそのまま信じない
Claudeの仕分けが返ってきても、そのまま「処分候補」「広告強化候補」に直結させてはいけません。 実際に行った検証を3つ挙げます。
仕分けはAIが速い。けれど、「期間・新商品・原価定義」という前提の妥当性は、人が判断します。線引きは、生成AIに任せていい仕事・任せてはいけない仕事もあわせて。
アフター:仕分けが「次の打ち手」に繋がる
検証を経て出来上がったのが、4つの象限と、それぞれに対応する打ち手です。仕分けただけでは1円も生みません。 仕分けが「次の行動」と結びついて、初めて価値が生まれます。
各象限ごとの打ち手をまとめると、こうなります。
仕分けはAIが速く済ませ、人は 「打ち手の優先順位づけ」と「実行のタイミング」 に集中する。これが、Claudeを使った仕分けの本当の価値です。
結局、自分でやるには
同じ仕分けを自社でやるための、手順と注意点をまとめます。
業態別:見るべき象限の重みが違う
4象限の仕分けはどの業態でも有効ですが、「特にどの象限を重く見るか」は業態で変わります。
数百〜数千SKUを抱える型では、象限Dの「死に筋候補」を抽出するのが最も効きます。SKU数が多いほど死に筋に埋もれた在庫が多く、処分による効果が出やすい。
季節品は仕分け期間の取り方が肝。シーズン期間とシーズン外で別に4象限を作り、「シーズン中の隠れ売れ筋」「シーズン外でも動く定番」を見分けます。同じSKUでも、期間で象限が変わります。
1SKUあたりの仕入ロットが大きい型では、象限Cの「隠れ死に筋」が最も痛い。売上が出ていても粗利が薄ければ、長期に資金を縛ったわりに利益が残らない。価格・原価の見直しを最優先で。
まとめ
SKUの売れ筋・死に筋を感覚で判断すると、売上だけ・期間の偏り・新商品と既存品の同一物差し、という3つのズレが起きやすくなります。Claudeに「売上×粗利率」の2軸で4象限に仕分けさせれば、SKUが数百あっても短時間で整理でき、隠れ売れ筋と隠れ死に筋まで浮かび上がります。
ただし、仕分けはAIが速い、というだけです。期間設定・新商品の扱い・原価定義の妥当性は人が確認し、「どの象限に何を当てるか」「いつ動かすか」も人の判断です。仕分けと判断を分けて運用すれば、SKUの多さは弱点ではなくなります。
私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのも、この「仕分けと判断を分ける」設計です。AIで整理した4象限の上に、人の優先順位づけが乗る。それが、SKUの多さに振り回されない在庫運営の土台になります。
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