「Claude Code で在庫管理をやらせられないか」という相談を受けることが増えました。結論から書きます。

Claude Code が得意なのは「手元にある在庫データを点検して、危ないSKUを見つけ出すこと」です。苦手なのは「毎日それを止めずに回し続けること」です。

この2つを混ぜて考えると、導入してから期待外れになります。本記事では、どこまでが手順どおりで動く範囲なのか、どこから別の仕組みが必要になるのかを、実際のExcel在庫表を使った手順で切り分けます。

(Claude Code の導入や基本操作はClaude Code 使い方ガイドにまとめています)

できること・できないことを先に分ける

在庫管理という言葉は範囲が広すぎるため、工程で分けます。

工程 Claude Code 補足
在庫表の形式を揃える(列名・単位・重複行) 得意 毎回形式が違うファイルほど効く
複数モールの在庫を突き合わせる 得意 商品コードの表記ゆれも指示で吸収できる
滞留SKU・欠品リスクSKUの抽出 得意 計算式を自分で決められる場合に限る
在庫日数・回転率の算出 得意 定義を最初に指定する必要がある
需要予測(季節性・トレンドの分離) 条件つき 過去データの期間と質に強く依存する
毎日決まった時刻に自動で回す 不得意 仕組みを別に用意する必要がある
発注数を確定して発注する 不得意 判断と責任の所在を人が持つべき領域

上4つは、指示文さえ固まれば繰り返し使えます。下3つは「できなくはないが、業務として任せるには足りない」という位置づけです。ここを最初に線引きしておくと、期待と実装がずれません。

手順:Excelの在庫表から危ないSKUを抜き出す

用意するのは、SKU・商品名・現在庫数・過去30日の出荷数が入った在庫表1枚です。モールの管理画面からCSVで落としたそのままで構いません。

1. 作業フォルダにファイルを置いて起動する

在庫データを扱うフォルダを1つ決め、そこにCSVを入れてから claude を起動します。Claude Code は起動したフォルダの中しか見ないため、これを守らないとファイルが見つからないところで止まります。

2. 判定のルールを日本語で先に書く

ここが最も重要です。AIに基準を考えさせないでください。基準は業務側が決めるものです。

在庫データ.csv を読んで、次の2つのリストを作ってください。
元のファイルは変更しないでください。

【滞留SKU】在庫日数が60日を超えているSKU
 在庫日数 = 現在庫数 ÷(過去30日の出荷数 ÷ 30)
 過去30日の出荷数が0のSKUは「出荷なし」として別枠にしてください

【欠品リスクSKU】在庫日数が14日を下回っているSKU

結果は在庫日数の大きい順に並べ、CSVで保存してください。

在庫日数の定義そのものに迷いがある場合は、在庫日数とは何か(定義と在庫回転率との違い)を先にご覧ください。定義が曖昧なまま自動化すると、出てきた数字を誰も信用できなくなります。

3. 出てきた数字を1つだけ手で確かめる

滞留SKUの1行目を選び、そのSKUの現在庫数と出荷数を元のCSVで見て、電卓で在庫日数を割り出します。合っていればこの指示文は次回から信用できます。ずれていれば、ずれの内容をそのまま日本語で伝えれば直ります。

この検算を省くと、間違った基準で3か月分の発注判断を積み上げることになります。1分の作業なので、手順に入れておくことを勧めます。

4. 指示文を保存して使い回す

うまくいった指示文はテキストファイルに残し、次回はコピーして貼るだけにします。プロジェクト単位の指示をファイルに固定する方法はCLAUDE.md の書き方にまとめています。在庫表の列名や商品コードの規則をここに書いておくと、毎回説明する手間が消えます。

実務での使用例:滞留在庫の棚卸しに使ったケース

当社で実際に行った作業です。以下は当社の運用実績であり、他社で同じ結果になることを示すものではありません。

効いたのは速さより「毎回同じ基準で見られること」でした。手作業だと担当者や時期によって判定が微妙に揺れますが、指示文を固定すると揺れません。

ここから先は自動化が成立しなくなる

上の手順は「人が思い出したときに走らせる作業」です。在庫管理を業務として回すには、次の3つが足りません。

1つ目は、頻度です。 在庫は毎日動くため、四半期に1回の点検では手遅れになります。毎朝の自動実行に載せる方法はClaude Code の自動実行・定期実行の手順に書いていますが、この方法は担当者のパソコンが起動していることが前提になります。

2つ目は、判定基準の粒度です。 「在庫日数60日」という一律の基準は、季節商品と定番商品を同じ物差しで測ってしまいます。SKUごとに基準を変えようとすると、指示文が管理できない長さになります。

3つ目は、需要予測です。 過去30日の出荷実績を割り算しているだけなので、来月伸びる商品と落ちる商品を区別できません。セール前後や新商品の立ち上がりでは、この計算はほぼ役に立ちません。

この3つに当たったら、それは「Claude Code の使い方が悪い」のではなく、扱う対象が仕組みを必要とする規模になったということです。

よくある質問

Q. 在庫データをAIに渡して大丈夫ですか? 社内の取り扱い規程を先に確認してください。商品コードと数量だけであれば個人情報は含まれませんが、顧客名や住所が同じファイルに入っている場合は、その列を削ってから渡すのが安全です。

Q. Excelマクロで十分ではないですか? 毎回同じ形式のファイルが来るなら、マクロのほうが安定します。モールごとに列構成が違う、形式が時々変わる、といった場合にClaude Codeが向きます。使い分けはClaude Code で Excel 業務を自動化するに整理しています。

Q. 数字が毎回少しずつ変わるのですが。 判定の定義が指示文に書ききれていない可能性が高いです。「出荷数0のSKUをどう扱うか」「返品分を出荷数に含めるか」など、境界のケースを明文化すると揃います。

Q. 何SKUくらいまで実用的ですか? 当社では600SKU規模で問題なく動いています。ただしこれは処理能力の話であり、SKUが増えるほど「一律の基準では判定できない商品」の割合が増えるため、実用の限界はSKU数ではなく商品構成の複雑さで決まります。

まとめ:点検は今日から、運用は仕組みで

Claude Code は、在庫表の点検を今日から自動化できます。判定基準を自分で決められること、出てきた数字を検算できること。この2つが揃っていれば、手順どおりで動きます。

一方で、毎日回す・SKUごとに基準を変える・先の需要を読む、の3つに入った時点で、指示文の延長では支えられなくなります。その線を引いたうえで使うと、期待外れになりません。

まずは滞留SKUの抽出を1回やってみてください。手作業で見落としていたSKUが出てくるかどうかで、自社のデータの状態も同時に分かります。


上で触れた「毎日・SKU単位・需要予測」の3つを担うのが、当社が開発・運営する EC在庫最適化システム S-wallet です。Amazon・楽天・自社ECの在庫を一元管理し、需要予測と在庫シミュレーションで欠品と過剰在庫の削減を支援します。S-walletを14日間無料で試すことができます。

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