在庫日数とは「今ある在庫が何日分の販売に相当するか」を表す指標で、365 ÷ 在庫回転率、または平均在庫金額 ÷ 日次売上原価で計算します。月次で出すなら分子を30、または当月日数に置き換えます。在庫回転率(年間売上原価 ÷ 平均在庫金額)とは表裏の関係で、回転率が高いほど在庫日数は短くなります。目安は業態によって幅があり、高回転のコモディティで約15〜30日、一般物販で約21〜60日、OEM・長納期品で約60〜120日が一つのレンジです。

この記事は、クラスター「在庫日数・在庫回転率」の親ページです。個別の計算式やベンチマークを深掘りした子記事へのリンクも記事末に置いていますが、まずはこの1本だけで「どう計算するか」「自社は今どのレンジにいるか」「何から改善すべきか」を判断できるように整理しています。

目次
  1. 在庫回転率・在庫日数とは何か(用語の定義)
  2. 計算式(在庫回転率/在庫日数)
  3. 業態別の目安(比較表)
  4. 自社の位置を判定する進め方
  5. よくある失敗パターン
  6. モデルケースで見る改善の考え方
  7. 子記事(さらに詳しく)
  8. よくある質問

1. 在庫回転率・在庫日数とは何か

(すでに用語は分かっていて、自社の日数をすぐ計算したい方は→在庫日数の計算方法(3つの公式)へ)

在庫回転率と在庫日数は、同じ現象を裏表から見た指標です。在庫回転率は「一定期間に在庫が何回入れ替わったか」を表す回数、在庫日数は「今ある在庫が何日分の販売に相当するか」を表す日数です。回転率が高い(=在庫日数が短い)ほど、仕入れた在庫が早く現金に戻り、キャッシュフローが軽くなります。逆に回転率が低い(=在庫日数が長い)ほど、資金が棚の上で寝ている状態です。

在庫回転率と在庫日数は、どちらか一方だけを見ても判断を誤ります。回転率は「速さ」、在庫日数は「量感」。両方をセットで見て初めて、自社の在庫が健全かどうかが判断できます。

2. 計算式(在庫回転率/在庫日数)

在庫回転率(回/年)
年間売上原価 ÷ 平均在庫金額
在庫日数(日)
365 ÷ 在庫回転率 = 平均在庫金額 ÷ 日次売上原価

在庫日数はさらに業態によって3つの式に分かれます(詳細は子記事「在庫日数の計算方法」参照)。①回転型=リードタイム+安全在庫、②季節補正型=シーズン内外で別管理、③ロット制約型=リードタイム+発注サイクル÷2+安全在庫。自社がどの型に近いかで、目指すべき在庫日数の水準が変わります。

3. 業態別の目安(比較表)

以下は子記事群で扱っている7パターンのベンチマークをこの親ページ用に一覧化したものです。実測の業界統計ではなく、EC事業者の在庫設計でよく使われる目安レンジとしてご利用ください。

業態パターン在庫回転率の目安在庫日数の目安特徴
B2C高回転コモディティ12〜25回/年約15〜30日発注頻度が高く、ロット制約が小さい
一般物販(回転型)6〜12回/年約21〜60日リードタイム+安全在庫で計算しやすい
季節品中心型シーズン内外で別管理シーズン中は短、シーズン外は長需要が特定期間に集中
OEM・PB長納期・B2B卸3〜6回/年約60〜120日発注頻度が低く、ロット制約が大きい

このレンジから外れているからといって即座に「悪い」わけではありません。重要なのは、自社の業態構造(発注リードタイム・ロット制約・需要の季節性)に照らして妥当かどうかです。

4. 自社の位置を判定する進め方

  1. 直近12ヶ月の年間売上原価と、月次の平均在庫金額を用意する。
  2. 上記の式で在庫回転率・在庫日数を算出する。
  3. 自社の業態(回転型/季節補正型/ロット制約型)を特定し、上表のどのレンジに近いかを確認する。
  4. レンジから大きく外れている場合、①発注リードタイムが長すぎないか、②安全在庫の設定が過大でないか、③滞留在庫(3ヶ月以上動いていない在庫)が全体を押し上げていないかの3点を順に確認する。
  5. 月次でこの数字を追い、±20%を超える変動が出た月は原因を必ず記録する。

滞留在庫の比率だけを素早く把握したい場合は、子記事「3ヶ月以上滞留比率」の1分チェック方法が使えます。なお、この集計や月次の変動要因の整理をAIに任せる進め方もあり、EC実務での具体的な使いどころはClaudeでEC業務はどこまでできるか(20の実例)にまとめています。

5. よくある失敗パターン

失敗①:業界平均とだけ比較する。自社と業態構造(発注リードタイム・ロット制約)が異なる他社の数字と比べても意味がありません。まず自社がどのパターンに近いかを特定するのが先です。
失敗②:在庫日数だけを見て粗利率を見ない。在庫日数が短くても粗利率が低ければキャッシュ効率は上がりません。粗利率×在庫日数のマトリクスで両方を同時に見る視点(子記事「粗利率30%と在庫日数60日」参照)が必要です。
失敗③:改善レバーを1つしか動かさない。在庫回転率の改善はABC分析・発注点見直し・滞留在庫の出口設計・SKU単位モニタリングの複数レバーを組み合わせて初めて効果が出ます(詳細は子記事「在庫回転率の改善」参照)。

6. モデルケースで見る改善の考え方

以下はモデルケース(試算)であり、実在の事業者の実績ではありません。年商1.4億円規模のEC事業者を想定します。

この規模感の試算を、自社の実際の数字で出してみたい場合は、S-walletの「30秒在庫圧縮メリット試算」がそのまま使えます。

7. 子記事(さらに詳しく)

8. よくある質問

Q. 在庫日数とは何ですか。在庫回転率とはどう違いますか。 A. 在庫日数は「今ある在庫が何日分の販売に相当するか」を日数で表した指標、在庫回転率は「一定期間に在庫が何回入れ替わったか」を回数で表した指標です。同じ現象を裏表から見ているため、365÷在庫回転率で在庫日数に換算できます。回転率は「速さ」、在庫日数は「量感」を示すので、どちらか一方だけを見ると判断を誤りやすくなります。実務では両方を並べて月次で追うのが基本の形です。

Q. 在庫日数の計算式を月次で出すにはどうすればいいですか。 A. 年次の式(365 ÷ 在庫回転率)の分子を、対象月の日数に置き換えます。具体的には「当月の平均在庫金額 ÷(当月の売上原価 ÷ 当月日数)」で、当月ベースの在庫日数が求められます。平均在庫金額は月初と月末の平均、または週次残高の平均を使うのが一般的です。月次で出す場合は季節変動の影響を受けやすいため、単月の数字だけで判断せず、3〜6ヶ月の推移で見ることをおすすめします。

Q. 在庫日数の目安は何日ですか。 A. 業態によって幅があります。本ガイドの比較表では、B2C高回転コモディティで約15〜30日、一般物販(回転型)で約21〜60日、OEM・PB長納期やB2B卸で約60〜120日、季節品中心型はシーズン内外で別管理、という目安レンジを置いています。実測の業界統計ではなく在庫設計でよく使われるレンジのため、自社の発注リードタイム・ロット制約・季節性に照らして妥当かどうかで判断してください。

Q. 在庫日数が長い(在庫回転率が低い)のはなぜですか。 A. 主な要因は3つに整理できます。①発注リードタイムが長く、その分の在庫を持たざるを得ない、②欠品を恐れて安全在庫を過大に設定している、③3ヶ月以上動いていない滞留在庫が平均を押し上げている、です。特に③は全SKUの平均値で見ていると優良在庫に埋もれて気づきにくく、まず滞留比率を出して切り分けるのが順序として効率的です。

Q. 在庫日数を改善するとどれくらいの期間で数字に出ますか。 A. 発注点の見直しやABC分析による整理は即日〜数週間で着手できますが、在庫日数という指標に反映されるまでには最低でも1〜2回転分、業態にもよりますが概ね1〜4ヶ月かかるのが一般的です。着手直後に数字が動かないことを理由に施策を止めてしまうケースが多いため、月次でモニタリングし、±20%を超える変動が出た月は原因を記録しておく運用をセットで用意してください。

Q. 在庫回転率と在庫日数、どちらを社内の共通指標にすべきですか。 A. どちらか一方に統一する必要はありません。経営会議など「速さ」を比較したい場面では在庫回転率(回数)、現場のオペレーションで「あと何日分あるか」を判断したい場面では在庫日数(日数)が直感的です。実務では両方を同じシートに並べ、365÷回転率=在庫日数の関係で常に相互に検算できる状態にしておくと、指標の使い分けで混乱が起きにくくなります。

Q. 在庫回転率・在庫日数はSKU単位と全体平均、どちらで見るべきですか。 A. 全体平均だけでは、回転が速いSKUと滞留しているSKUが相殺されて実態が見えなくなります。まず全体平均で自社のおおまかな位置を把握し、次にABC分析でSKUをランク分けしたうえでランクごとの在庫日数を見るのが実務的な順序です。特にCランク品は個々の金額が小さくても点数が多いため、平均を押し上げている主犯になっているケースが少なくありません。


私たちArkeでは、この記事で扱った在庫回転率・在庫日数の計算と月次モニタリングを、実務でそのまま使える形に落とし込む在庫管理SaaS S-wallet を提供しています。自社の数字が今どのレンジにあるのか、まずはお問い合わせまたは30秒の試算からご確認ください。