数字の話
2026.06.01
by Arke 合同会社
月次P/Lで EC社長が真っ先に見るべき5つの数字
月次P/Lを全部眺めて結局判断できないなら、見る数字を絞ったほうが、判断は早く正確になります。
毎月、経理から月次P/Lが上がってくる。売上、原価、各種販管費、営業利益、特別損益、税前利益、純利益、貸借対照表の主要科目——数十行の数字を前に、「どこから見ればいいか」迷う。一通り眺めて、なんとなく違和感を覚えるが、具体的な打ち手にはつながらない。これは、多くのEC社長に共通する状態 です。
問題は、見る数字が「多すぎる」ことです。本記事では、EC社長が月次レビューで真っ先に見るべき数字を 5つに絞ります。すべてを見るのではなく、5つを丁寧に見る。10分で月次の健全性を判断できる——そんな運用を目指します。
なぜ5つかというと、3つでは見落としが出やすく、10個では結局判断が止まる からです。EC物販で「商売の稼ぐ力/在庫の方向/広告の効きと利益/キャッシュの実態」をひと通り押さえるのに、5つは過不足ない数になります。
CONTENTS / もくじ
- 月次P/Lで真っ先に見るべき5つの数字
- 結局、どう運用するか(10分レビュー・業態別)
- 図解:5指標を1枚でレビュー
- まとめ
月次P/Lで真っ先に見るべき5つの数字
順番にも意味があります。①から⑤の順で見るのが効率的 です。
①売上総利益率(粗利率)の変化
なぜ見るか
売上が伸びても粗利率が下がっていれば、儲ける力は落ちています。粗利率は商売の「単位あたりの稼ぐ力」を示し、これが安定しているか改善していれば、ビジネスの土台は健全です。
何を比較するか
前月比、前年同月比、直近3ヶ月の推移。単月の値だけ見ると、季節要因や一時的な値引きで上下するため、3視点で見るのが原則です。
⚠ 黄信号の例
粗利率が前年同月比で
1ポイント以上の低下を続けている場合。原価率の悪化、値引き頻度の増、原価率の高い新商品の構成変化など原因はさまざま。詳しい構造は
利益が残らない決算書の3つの構造を参照。
②月末在庫評価額/在庫日数の方向
なぜ見るか
在庫はP/Lに費用として現れないため、損益だけ見ていると見落としがちです。しかし在庫評価額は、キャッシュフローと将来の損益(評価損や値引き)に直結します。
何を比較するか
前月末との差、そして売上の伸び率との比較。「在庫が増えること」自体は悪ではなく、問題は、在庫の伸びが売上の伸びを超えているかどうかです。
③広告費/売上比率(広告依存度)
なぜ見るか
EC事業は広告費の影響を受けやすく、広告比率の上昇は粗利を直撃します。広告は売上を作りますが、その効率が落ちると、売上が伸びても利益は薄くなります。
何を比較するか
前月比と直近3ヶ月の推移。広告比率は単月で動きがあるので、推移で傾向を見るのが要点です。
⚠ 黄信号の例
広告比率が継続的に上昇している場合。広告効率(ROAS)の悪化、新規獲得単価の上昇、リターゲ依存などが原因。広告は入れた分そのまま利益から差し引かれるため、増加が続けば営業利益に直接効きます。
④営業利益/営業利益率(最終的な稼ぐ力)
なぜ見るか
P/Lの最後にあって見落とされがちですが、本業の稼ぐ力を最も端的に示すのが、営業利益と営業利益率です。
何を比較するか
前月比、前年同月比、年間トータルでの推移。単月の振れは正常ですが、半年〜年で見て営業利益が増えているかが、経営の健全性の指標です。
⚠ 黄信号の例
売上が伸びているのに、営業利益が横ばい、または減少しているケース。粗利率の低下、広告比率の上昇、販管費の膨張など、①〜③のいずれかが原因。営業利益は結果指標であり、原因は①〜③に遡るのが順序です。
⑤月次キャッシュ流出入(粗利と現金の乖離)
なぜ見るか
P/Lの利益と、銀行口座の残高は、別物です。利益が出ていても、在庫増加や売掛金増加でキャッシュは出ていきます。経営の最終的な健全性は、キャッシュで確認します。
何を比較するか
営業利益と、月次のキャッシュ流出入の差。「利益は出ているのに、なぜ現金が増えないのか」を見える化します。
結局、どう運用するか
5つの数字を、毎月10分で見渡せる運用 を作ります。
月次10分レビューの組み立て方
3つの視点をルーティンにします。
- ① 前月比 ── 直近の変化(粗利率、広告比率、在庫評価額の差分)
- ② 前年同月比 ── 季節要因を考慮した健全性チェック
- ③ 直近3ヶ月の推移 ── 単月の振れではない、傾向の動き
5つの数字 × 3視点 = 15項目 を1枚のシートに並べれば、上から順に確認するだけで10分で終わります。
「全部見ない」のが正解
15項目のうち、
黄信号が立っているところに集中する。これが、判断のスピードと精度を両立させる運用です。月次は「眺める時間」ではなく「決める時間」に変わります。
業態別:特に重く見るべき数字
業態によって、5つのうちどれを重く見るかは変わります。
型 ASKUが多い型
最重要:② 在庫評価額/在庫日数
SKUが増えると、個々の在庫はわずかでも合計が雪だるま式に膨らみます。在庫の伸びが売上の伸びを超えていないかを、毎月チェックします。
型 B季節品中心の型
最重要:① 粗利率 + ⑤ キャッシュ流出入
シーズン終盤の値引きが粗利率を押し下げ、シーズン外の在庫がキャッシュを縛ります。季節の山と谷で、両指標を読み解きます。
型 COEM・PB長納期型
最重要:① 粗利率 + ② 在庫評価額
仕入ロットが大きく、原価交渉の頻度も少ないため、原価率はじわじわ動きます。在庫評価額は大ロットで階段状に増えるので、3ヶ月推移で把握しておきます。
業態によって重みは違いますが、5つの数字を 「ベースライン」として持っておく ことが共通の出発点です。重い数字だけ見て他を捨てるのではなく、5つを並べたうえで重点配分を変える——この姿勢が、判断の盲点を減らします。
図解:5指標を1枚でレビュー
5つの指標と、それぞれの「注目ポイント」「黄信号の例」を1枚に整理しました。
▲ 10分で見られる5つの数字。単独の値より「比較の視点」で異常を捕まえる。
まとめ
月次P/Lを全部見ようとして判断できない状態は、見る数字を 5つに絞る ことで解消できます。① 粗利率の変化/② 在庫評価額・在庫日数の方向/③ 広告費・売上比率/④ 営業利益・営業利益率/⑤ 月次キャッシュ流出入。この5つを、前月比・前年同月比・3ヶ月推移の3視点で見ると、月次レビューは10分で終わります。
業態によって、どの数字を重く見るかは変わります。健全値は業界・商材で異なるため、本記事では具体的な数値基準は提示していません(特定業界の数値を全業態の正解として扱うのは、判断を誤らせるからです)。比較の視点で、自社の健全性を測ってください。
私たち Arke がデータで取り組んでいるのも、まさにこの「経営判断に必要な数字を見える形にする」設計の支援です。10分で済む月次レビューが定着すると、空いた時間は次の打ち手の検討に回せます。月次レビューは、儀式ではなく、判断のための道具です。5つの数字に絞ることで、月次は「眺める時間」ではなく「決める時間」に変わります。
📊 在庫健康診断(60分・無料)
「自社の月次P/Lのどこを見るべきか整理したい」「在庫の伸びと売上の伸びの関係を診断してほしい」という方へ。Arke では、貴社の販売・在庫・利益データをもとに、見るべき5指標の現状と改善余地を60分で診断する無料サービスをご提供しています。診断結果は、その場でレポート形式でお持ち帰りいただけます。
お問い合わせフォームへ →
関連記事