複数倉庫(FBA・RSL・自社倉庫)を使い分けているEC事業者は多いものの、「どのSKUをどこに置くか」の基準が担当者の経験や成り行きで決まっていることがよくあります。「昔からこの商品はFBAだから」「担当者がそう決めたから」「なんとなく全部RSLへ送っている」――心当たりのある現場は少なくないはずです。
本記事では、3つの倉庫オプションを4つの判断軸で構造化し、業態別の最適配置を考えるための枠組みを示します。6/6公開の楽天・Amazon・自社EC、在庫はどこに何個置くかが「販路ごとの配分量」の話だったのに対し、本記事は「倉庫ごとの配置場所」の話。販路と倉庫は別レイヤー、というのが本記事の前提です。
- 3倉庫の特性(1分でおさらい)
- 4つの判断軸
- 業態別の倉庫配置パターン
- 結局、どこから始めるか
- 図解:3倉庫 × 4軸の組み合わせマップ
- まとめ
3倉庫の特性(1分でおさらい)
3つの倉庫オプションの特性を、優劣でなく特性として並べます。
3倉庫はそれぞれ得意領域が違います。「全部FBA」も「全部自社倉庫」も、特性を活かしきれない選択です。各倉庫の手数料の細部は時期で変動するため、本記事では構造的な特性に絞って整理します。
4つの判断軸
倉庫配置を決める判断軸は、4つに整理できます。
「全SKUに即日配送が要る」は実は少数です。配送スピード重要度をSKU別に整理するのが、最初の作業になります。
逆に、在庫日数60日を超えるSKUをFBAに置き続けると、長期保管手数料が累積し、利益を削ります。詳細はFBA保管料、1日10円が3年で◯百万円になる雪だるま現象とFBA保管料 月10万・売上比3% を超えた時の見直しポイントで扱っています。在庫日数の見極めは、業態別の計算式で出すのが実用的です(適正在庫日数は何日か、業態別の3つの計算式)。
ただし、販路シェアと倉庫配置を1対1で対応させる必要はありません。Amazon比率が高くても、長期保管SKUは自社倉庫に置く、といった軸②との組み合わせ判断が要ります。
需要変動が大きく、販路間で在庫を移動させる頻度が高いSKU(季節商品・キャンペーン商品・新商品)は、自社倉庫を中央プールにする方が動かしやすい。FBAやRSLへの転送は、必要量だけ直前に行います。返送コストや対応SKU制約があるため、頻繁な移動を前提とする倉庫設計には向きません。
業態別の倉庫配置パターン
業態別に、典型的な倉庫配置パターンを4つ示します。
業態を問わない万能配置はありません。共通するのは、「自社倉庫を中央プールとして持つ」前提の上に、FBA/RSLを販路特化の「出口」として組み合わせる、という考え方です。
結局、どこから始めるか
全SKUを4軸で評価する必要はありません。多くの企業が「全SKUを分析しよう」として手が止まります。最初は 「動かないSKU」と「即配が要るSKU」の2極 から始めます。
まず2極のSKUから整理する
動かないSKU(在庫日数90日超など)は、FBAから自社倉庫へ移すだけで保管料が下がります。これだけで、月次の保管料が目に見えて変わります。
即配が要るSKU(売れ筋上位・新商品の主力)は、販路シェアに応じてFBA/RSLに集約します。動的配置の柔軟性は犠牲になりますが、配送スピードの価値が上回ります。
例えば上位10SKUと下位10SKU、合計20SKUを抽出し、4軸(配送スピード/保管期間/販路比率/在庫移動頻度)でチェックするだけで、配置見直しの第一歩としては十分。
3〜4SKU単位の試験配置と月次再評価
いきなり全SKUを移し替えるのではなく、3〜4SKU単位での試験配置から始めます。1ヶ月運用して、保管料・配送スピード・売上の変化を確認。問題なければ、隣のSKUグループに範囲を広げます。
図解:3倉庫 × 4軸の組み合わせマップ
3倉庫を4軸で評価したマップを1枚に整理しました。
まとめ
FBA・RSL・自社倉庫の倉庫配置は、3倉庫の特性を4つの判断軸(配送スピード/保管期間/販路シェア/動的配置)で評価することで、構造化できます。「FBAは万能」でも「自社倉庫が最強」でもなく、SKU特性と販路構造に応じて組み合わせるのが本質です。
自社倉庫を中央プールとして持ち、FBA/RSLを販路特化の「出口」として組み合わせる――この基本構造の上に、4軸で個別SKUの配置を判断する。月次で見直し続けることで、保管料と配送スピードのバランスが整っていきます。
そして最適解は会社単位ではなく、SKU単位で変わることを忘れずに。まずは売れ筋SKUと長期滞留SKUの両極から見直してみてください。その小さな配置変更が、保管料・欠品率・在庫移動コストを大きく改善するきっかけになります。
私たち Arke がデータで取り組んでいるのも、まさにこの「倉庫配置を、経験ではなく軸で説明できる仕組み」の設計支援です。倉庫はコストの場ではなく、設計の対象。配置の質が、保管料・配送スピード・在庫移動コストの全体最適を決めます。
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