FBAに全部入れたら保管料が雪だるま、自社倉庫に集約したら配送が遅延、RSLに分けたら在庫が偏る――。「どの倉庫に何を置くか」の問いに、3倉庫の特性だけでは答えが出ない。

複数倉庫(FBA・RSL・自社倉庫)を使い分けているEC事業者は多いものの、「どのSKUをどこに置くか」の基準が担当者の経験や成り行きで決まっていることがよくあります。「昔からこの商品はFBAだから」「担当者がそう決めたから」「なんとなく全部RSLへ送っている」――心当たりのある現場は少なくないはずです。

本記事では、3つの倉庫オプションを4つの判断軸で構造化し、業態別の最適配置を考えるための枠組みを示します。6/6公開の楽天・Amazon・自社EC、在庫はどこに何個置くかが「販路ごとの配分量」の話だったのに対し、本記事は「倉庫ごとの配置場所」の話。販路と倉庫は別レイヤー、というのが本記事の前提です。

「FBAは万能」「自社倉庫が最強」ではない。3倉庫の優劣ではなく特性、4軸の組み合わせで最適化する――というのが本記事の立場です。「どの倉庫が優れているか」ではなく「何が得意か」という視点で読んでください。
目次
  1. 3倉庫の特性(1分でおさらい)
  2. 4つの判断軸
  3. 業態別の倉庫配置パターン
  4. 結局、どこから始めるか
  5. 図解:3倉庫 × 4軸の組み合わせマップ
  6. まとめ

3倉庫の特性(1分でおさらい)

3つの倉庫オプションの特性を、優劣でなく特性として並べます。

FBA
Amazon FBA ── 即配ネットワーク特化
Amazonの即配ネットワークに乗せられる、販路Amazon特化の強い倉庫。即日〜翌日配送の対応力が最大の武器。保管料は高めで、長期保管手数料の追加もあります。返送コストも大きいため、「入れたら戻しにくい」性質を持ちます。短期回転商品との相性が抜群。
RSL
楽天スーパーロジスティクス ── 楽天最速便対応
楽天の最速便対応で、楽天販売に強い倉庫。保管料は中程度で、対応SKUに条件・制約がある場合があります。楽天比率が高い企業ほど活用しやすく、楽天セールでの即日出荷が要となる商材で力を発揮します。
自社倉庫
自社保有 or 3PL契約 ── 販路横断・長期保管に強い
販路横断で使える柔軟性が最大の特徴。Amazon・楽天・自社ECをまとめて管理できます。保管料は3PLの契約や自社運営で大きく変動し、配送スピードは販路別倉庫より中程度。長期保管の自由度と販路非依存性が強みで、中央在庫プールとして機能します。

3倉庫はそれぞれ得意領域が違います。「全部FBA」も「全部自社倉庫」も、特性を活かしきれない選択です。各倉庫の手数料の細部は時期で変動するため、本記事では構造的な特性に絞って整理します。

4つの判断軸

倉庫配置を決める判断軸は、4つに整理できます。

AXIS 01
軸①【配送スピード要求】 即日/翌日 vs 数日許容
SKUごとに、配送スピードが売上に与える影響は違います。売れ筋・新商品で即日配送が決め手になるなら、販路に直結した倉庫(FBA/RSL)が向きます。B2B卸や低頻度購入の商材で配送スピードが売上を左右しないなら、自社倉庫で十分です。

「全SKUに即日配送が要る」は実は少数です。配送スピード重要度をSKU別に整理するのが、最初の作業になります。
AXIS 02
軸②【保管期間の想定】 短期回転 vs 長期保管
在庫日数が短く回転が速いSKUは、FBA/RSLの保管料デメリットが効きません。在庫日数30日以内なら、これらの倉庫は問題なく機能します。

逆に、在庫日数60日を超えるSKUをFBAに置き続けると、長期保管手数料が累積し、利益を削ります。詳細はFBA保管料、1日10円が3年で◯百万円になる雪だるま現象FBA保管料 月10万・売上比3% を超えた時の見直しポイントで扱っています。在庫日数の見極めは、業態別の計算式で出すのが実用的です(適正在庫日数は何日か、業態別の3つの計算式)。
AXIS 03
軸③【販路シェア】 Amazon比率 / 楽天比率 / 自社EC比率
販路別の売上構成比に応じて、倉庫の重み配分を変えます。Amazon比率が70%を超えるならFBA中心、楽天比率が70%を超えるならRSL中心、販路が分散していて自社ECも一定比率があるなら、自社倉庫+FBA/RSLのハイブリッドが現実的です。

ただし、販路シェアと倉庫配置を1対1で対応させる必要はありません。Amazon比率が高くても、長期保管SKUは自社倉庫に置く、といった軸②との組み合わせ判断が要ります。
AXIS 04
軸④【移動・返送の頻度】 固定配置 vs 動的配置
SKU特性が安定し、販路が固定されているSKUは、FBA/RSLに直接置けます(Amazon専売SKU・楽天専売SKUなど)。一度置いてしまえば、しばらく動かす必要がありません。

需要変動が大きく、販路間で在庫を移動させる頻度が高いSKU(季節商品・キャンペーン商品・新商品)は、自社倉庫を中央プールにする方が動かしやすい。FBAやRSLへの転送は、必要量だけ直前に行います。返送コストや対応SKU制約があるため、頻繁な移動を前提とする倉庫設計には向きません。

業態別の倉庫配置パターン

業態別に、典型的な倉庫配置パターンを4つ示します。

B2C × Amazon比率高型
FBA厚め + 自社倉庫で長期SKU
回転の速い売れ筋はFBAに置き、長期保管が必要なSKUは自社倉庫で保管料を抑えます。配送速度と保管コストの両立がポイント。Amazon売上が全体の大部分を占めるなら、物流品質が直接売上に響くため、FBA中心の判断は合理的です。
楽天セール中心型
RSL + 自社倉庫で繁忙期前ストック
楽天セール時の即配性はRSLで確保し、セール前の事前積み上げは自社倉庫で行います。セール終了後の再配分も自社倉庫を中継地点に。RSLは「セール期のための出口」、自社倉庫は「ストック調整プール」という役割分担。
自社ECブランド型
自社倉庫メイン + FBA/RSLは認知獲得用
ブランド世界観を自社倉庫でコントロールし、モール露出用のサンプル的SKUのみをFBA/RSLに置きます。ブランド体験を重視する事業者は、自社倉庫を中心に設計するケースが多いパターン。FBAやRSLは販路拡大のための補完的な役割。
OEM・PB長納期型
自社倉庫を中央プール、FBA/RSLは出荷直前のみ
リードタイムが長い商材は、自社倉庫で在庫を抱え、需要に応じて販路別倉庫へ転送する設計が、無駄な保管料を抑えます。FBA・RSLは「販売直前の補充拠点」として使うのが管理しやすい。

業態を問わない万能配置はありません。共通するのは、「自社倉庫を中央プールとして持つ」前提の上に、FBA/RSLを販路特化の「出口」として組み合わせる、という考え方です。

結局、どこから始めるか

全SKUを4軸で評価する必要はありません。多くの企業が「全SKUを分析しよう」として手が止まります。最初は 「動かないSKU」と「即配が要るSKU」の2極 から始めます。

まず2極のSKUから整理する

動かないSKU(在庫日数90日超など)は、FBAから自社倉庫へ移すだけで保管料が下がります。これだけで、月次の保管料が目に見えて変わります。

即配が要るSKU(売れ筋上位・新商品の主力)は、販路シェアに応じてFBA/RSLに集約します。動的配置の柔軟性は犠牲になりますが、配送スピードの価値が上回ります。

例えば上位10SKUと下位10SKU、合計20SKUを抽出し、4軸(配送スピード/保管期間/販路比率/在庫移動頻度)でチェックするだけで、配置見直しの第一歩としては十分。

3〜4SKU単位の試験配置と月次再評価

いきなり全SKUを移し替えるのではなく、3〜4SKU単位での試験配置から始めます。1ヶ月運用して、保管料・配送スピード・売上の変化を確認。問題なければ、隣のSKUグループに範囲を広げます。

「うちは◯◯型」と会社単位で決めつけない。同じ会社の中でも、売れ筋SKU/新商品SKU/長期在庫SKUで最適配置は異なります。SKUグループ単位で配置を変える柔軟性が、最適化の継続性を生みます。倉庫配置は1回決めて終わりではなく、月次で見直し続ける運用が前提。

図解:3倉庫 × 4軸の組み合わせマップ

3倉庫を4軸で評価したマップを1枚に整理しました。

3倉庫 × 4判断軸:特性マップ 判断軸 FBA RSL 自社倉庫 軸① 配送スピード 即日・翌日対応 楽天最速便 数日許容向き 軸② 保管期間 長期は手数料↑ 中期OK 長期保管に強い 軸③ 販路シェア Amazon比率高 楽天比率高 販路分散・自社EC 軸④ 移動・返送 返送コスト大 対応SKU制約あり 中央プールに最適 ※ ◎=向いている、◯=条件付き、△=不向き。SKU特性と販路構造で組み合わせる。
▲ 倉庫の優劣ではなく特性。4軸で組み合わせて最適化する。

まとめ

FBA・RSL・自社倉庫の倉庫配置は、3倉庫の特性を4つの判断軸(配送スピード/保管期間/販路シェア/動的配置)で評価することで、構造化できます。「FBAは万能」でも「自社倉庫が最強」でもなく、SKU特性と販路構造に応じて組み合わせるのが本質です。

自社倉庫を中央プールとして持ち、FBA/RSLを販路特化の「出口」として組み合わせる――この基本構造の上に、4軸で個別SKUの配置を判断する。月次で見直し続けることで、保管料と配送スピードのバランスが整っていきます。

そして最適解は会社単位ではなく、SKU単位で変わることを忘れずに。まずは売れ筋SKUと長期滞留SKUの両極から見直してみてください。その小さな配置変更が、保管料・欠品率・在庫移動コストを大きく改善するきっかけになります。

私たち Arke がデータで取り組んでいるのも、まさにこの「倉庫配置を、経験ではなく軸で説明できる仕組み」の設計支援です。倉庫はコストの場ではなく、設計の対象。配置の質が、保管料・配送スピード・在庫移動コストの全体最適を決めます。

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