在庫最適化が進まないのは、やる気の問題ではありません。「最初の一手を間違えている」——これが、多くのケースで起きていることです。

「在庫を何とかしないと」と思いながら、何から手をつければよいか分からず、結局動けないまま数ヶ月が過ぎる。これは、多くのEC事業者に共通する状態です。意欲がないのではありません。むしろ、課題が大きく見えるからこそ、最初の一歩を間違えると挫折しやすい——それだけのことです。

本記事は、「在庫最適化を始めるなら、まず何をやればいいか」に絞ってお伝えします。難しいことから始めない。お金をかけることから始めない。今日の30分でできることから始める。その入り口が分かれば、半年後には景色が大きく変わります。

CONTENTS / もくじ
  1. 在庫最適化で「失敗の入り方」と「失敗しない入り方」
  2. 失敗しない順序:5つのステップ
  3. 図解:「失敗の入り方」と「失敗しない入り方」を一枚で
  4. 結局、どこから始めるか(業態別)
  5. まとめ

在庫最適化で「失敗の入り方」と「失敗しない入り方」

まず、よくある「失敗の入り方」から見ます。心当たりがあれば、そこが躓いている場所かもしれません。

よくある失敗の入り方

✗ 1いきなり全SKUの一斉見直し
「ぜんぶ整理しよう」と意気込んで、数百〜数千のSKUを並べた瞬間に終わりが見えなくなり、手が止まります。現場は通常業務をこなしながら分析を続けるのが現実的でなく、分析途中で挫折します。
✗ 2いきなりSaaSの導入検討から入る
比較表を作り、デモを見て、見積もりを取って、稟議を回す。たどり着くまでに数ヶ月かかり、その間、在庫の現状は何も変わりません。さらに業務フローが固まっていない段階でSaaSを入れても、運用に乗らないまま費用だけが続きます。
✗ 3発注ルールから変える
「在庫が増えるのは発注のせいだ」と考えるのは自然ですが、現状の在庫がどうなっているかを把握する前に発注を変えると、何が改善で何が改悪かを判断できません。すでに積み上がった在庫は、発注ルール変更だけでは減りません。

3つに共通するのは、「大きく動かそうとしている」 ことです。大きく動かすにはエネルギーも時間も要り、結局動かないまま、課題感だけが膨らみます。さらに、「大きく始める」入り口は社内の合意形成や予算承認も伴うため、始める前に何ヶ月も止まる、という二重の停滞を招きます。

失敗しない入り方

入り口を変えるだけで、止まっていた仕事は動き出します。失敗しない入り方は、ただ1つです。

✓ 失敗しない入り方
「まず現状を見える化する」——この一歩から始めます。いま自社にいくらの在庫があり、そのうちどれだけが動いていないか(滞留しているか)を、1枚の表で見える状態にする。これだけです。発注も、SaaSも、ルール変更も、すべては「現状が見えている」ことが前提になります。お金もかからず、誰の許可も要らない。今日の30分で、明日からの仕事が変わります。

「小さく始めて、見えたものから次を決める」——これが、止まっていた在庫最適化を動かす最も確実な順序です。


失敗しない順序:5つのステップ

現状把握から始めて、最終的に仕組み化に至るまでの順序を、5ステップで示します。順番には意味があります

STEP 1今日〜今週現状把握
SKUごとに「現在の在庫数」「在庫日数(あと何日分か)」「最終販売日からの経過日数」を、1枚のシートに出します。完璧でなくて構いません。粗くてもいいので、まず数字を並べることが大事です。具体的な手順は3ヶ月以上滞留比率を1分で出す現状把握フレームで扱っています。
STEP 2今月滞留の特定
現状が見えると、自然に「動いていないSKU」が浮かび上がります。それを抽出します。判定の基準(たとえば「90日以上動いていない」「在庫日数が180日超」)は、商材で違って構いません。重要なのは、在庫数量ではなく在庫金額。100個余っている商品より、500万円分余っている商品の方が経営への影響は大きい。金額インパクトの大きい上位から見ます。
STEP 3今月〜来月滞留の処理
滞留が見えたら、動かす段階に入ります。値引き販売、アウトレット枠出品、セット販売、B2B卸、そして必要なら廃棄・損切り。1つのSKUに複数の選択肢を期限付きで順に試すのが基本です。「セール一発で全部捌こう」とすると深い値引きに追い込まれます。期限と回収率の両方をにらんで動かしてください。セール後の死に在庫が年間利益を圧迫する実態もあわせて参考に。
STEP 4来月〜3ヶ月発注の見直し
滞留の処理が動き始めたら、ようやく発注の見直しに進みます。「なぜ滞留したのか」を遡って、発注の判断基準(在庫日数の閾値、リードタイム、ロット)を商材タイプごとに整理します。順序として、滞留を片付ける前に発注だけ変えても、すでに積み上がった在庫は減らない、という事実があるためです。
STEP 53〜6ヶ月仕組み化
最後に、ここまでの取り組みを「誰がやっても回る」状態に変えます。判断基準を文書化し、チェックリストに落とし、レビューの定例を設ける。属人化からの脱却フェーズです。詳しい進め方は在庫管理を"仕組み"にする5ステップで扱っています。

図解:「失敗の入り方」と「失敗しない入り方」を一枚で

2つの入り方を、視覚的に並べます。

在庫最適化:失敗の入り方 vs 失敗しない入り方 ✗ 失敗の入り方(やりがち) いきなり 全SKU見直し いきなり SaaS導入 発注ルール から変える → 結局、動かない/続かない ✓ 失敗しない入り方(小さく始める) STEP 1 現状把握 STEP 2 滞留特定 STEP 3 滞留処理 STEP 4 発注見直し STEP 5 仕組み化 ← 今日できる小さな一歩
▲ 全部いっぺんは続かない。"見える化"の小さな一歩から始めるのが、結局いちばん速い。

上段の3つは、つい選んでしまう「大きく始める」入り方。下段の5ステップは、現状把握から段階的に進める「小さく始める」入り方です。最初の一手の違いが、半年後の景色を大きく変えます。


結局、どこから始めるか

5ステップは原則として上から順に進めるのが基本ですが、自社がどこから着手すべきかは業態によって変わります

型 ASKUが多い型
最初の一手:STEP1(全SKUに在庫日数を入れる)
数百〜数千SKUを抱える型では、STEP1の「現状把握」を、原則として全SKUで一度に行います。手作業では現実的でないので、データ整理を表計算やツールに頼って一気に並べる。「全SKUに在庫日数の列を一度入れる」が、最初の一手です。まずは在庫金額上位20商品からでも、流れは作れます。
型 B季節品中心の型
最初の一手:STEP2(滞留の特定)
季節品は、シーズン外に滞留が積み上がります。最初の一手はSTEP2「滞留の特定」、特に「シーズン終了後◯ヶ月経過したSKU」をリストアップすること。次のシーズンが来る前に処理しておくことが、回転率を保つ条件になります。
型 COEM・PB長納期型
最初の一手:STEP1+発注済み在庫の "あと何日で入荷するか"
リードタイムが長く、1回の発注ミスが長期に響く型です。STEP1の現状把握と並行して、発注済み在庫の「あと何日で入荷するか」も並べておくと、STEP4の発注見直しに早く進めます。在庫日数とリードタイムを同じ表に置くのが要点です。

業態によって最初の一手は変わりますが、共通するのは「現状を見える化する」——この一歩から始まることです。順序を守れば、半年後には在庫評価額・滞留比率・キャッシュの3つすべてが目に見えて変わってきます。逆に、順序を飛ばして大きく動かそうとすると、半年後も同じ場所にいる——これが、これまで多くの事業者を見てきての実感です。


まとめ

在庫最適化が進まないのは、やる気ではなく、最初の一手の選び方の問題です。いきなり全SKU、いきなりSaaS、いきなり発注ルール——これらは、課題の大きさに対して動きが大きすぎて、続きません。

失敗しない入り方は、現状把握の小さな一歩から始めることです。SKUごとの在庫日数と最終販売日経過を1枚に並べる。それだけで、何が滞留しているかが見え、次に動かす相手が決まり、発注を見直す材料が揃い、最後に仕組み化のフェーズへ進めます。順番には意味があります

私たち Arke がデータとAIで取り組んでいるのも、この「小さな一歩から仕組み化へ」の支援です。明日の30分から動き出せます。

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